ちはやふる 上の句の映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
上島春彦
競技かるたというのは誰でも知っているがやったことはない、というゲームの典型だろう。最大のクライマックス、全国大会は後篇だとして(冒頭描写がそういう感じ)、こちらはそこへ向かう前段階としてとりあえず文句なし。でも星はそっちにとっておく。過去のズルがトラウマとなって、以来ここ一番でのつきに見放された少年という細部も良い。主人公の少女はそういう葛藤とは基本的に無縁だが対戦相手のサド少年が「ソロモンの偽証」の不良で、この俳優の存在感がギャグっぽくていいぞ。
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映画評論家
北川れい子
部活を描いた映画には「シコふんじゃった。」「ウォーターボーイズ」「ロボコン」など、良質な娯楽作品がいくつもあり、部活の種目はさまざまでも、始めヘナチョコ、途中で迷走、さいごは本気でぶつかってと、その結果はどうあれ、やることはやったという達成感があった。が本作、まだ前篇ではあるが、どうも競技かるたの百人一首をからめた幼なじみ同士の三角関係がメインのようで、これまでの部活映画とは方向が違う。部員集めのくだりや練習、競技も形式的演出が目立ち、こんなもん?
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映画評論家
モルモット吉田
人気漫画原作の前後篇ものなので期待していなかったが小泉徳宏が初めて脚本も兼ねたことも幸いしたようで過去作にないリズムと語り口が心地良い青春映画の佳作になっている。ハイテンション演技を血肉化させた広瀬が屈託のない表情で廊下を突進する姿など実に魅力的。カルタ取りの画は工夫が少なくやや単調で、広瀬の研ぎ澄まされた聴力がクライマックスまで放置されているのも不満。能力が使えなくなっていた設定が欲しいところだが前篇だけでも成立する構成と演出の配分は見事。
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