白鯨との闘いの映画専門家レビュー一覧
白鯨との闘い
「ビューティフル・マインド」のアカデミー賞監督ロン・ハワードが小説『白鯨』の題材となった海難事故を取り上げたアクション・ドラマ。巨大なクジラに襲われ捕鯨船が沈没。生存者は太平洋のただ中を漂流する……。3D・2D同時公開。捕鯨船エセックス号の一等航海士を「ラッシュ/プライドと友情」でもロン・ハワード監督と組んだクリス・ヘムズワーズが演じるほか、「リンカーン/秘密の書」のベンジャミン・ウォーカー、「バットマン ビギンズ」のキリアン・マーフィー、「007/スカイフォール」のベン・ウィショーらが出演。原作は全米図書賞を受賞したノンフィクション『復讐する海―捕鯨船エセックス号の悲劇』。
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映画・漫画評論家
小野耕世
『白鯨』の話はアメリカのコミックブックの翻訳で小学校六年のとき初めて読んだ。一等航海士がエイハブ船長を殺そうと銃をとりかける場面があったが、原作にはないとあとで知った。これは『白鯨』のもとになったらしい実話の映画化で、船長と一等航海士の確執が明白なテーマ。『白鯨』では船員たちの名はみな呼びすてだが、捕鯨船では下っ端船員でもみな必ずミスターをつけて呼ばれていたと初めて知った。捕鯨基地ナンタケットの街の描写がいい。もちろんCGによる巨鯨がすごい。
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映画ライター
中西愛子
メルヴィルの名作『白鯨』に隠されていた真実を描いたノンフィクションの原作を、ロン・ハワードがダイナミックに映画化。かつて伝説の白鯨の死闘を繰り広げたエセックス号の船乗りに、メルヴィルが話を聞き、その回想を辿っていく構成も面白い。臨場感たっぷりの船上シーンでは、未知なるものに挑み、サバイバルしていく厳しさをじりじりと壮絶に炙り出す。そして、邦題からは想像できないある核心へ……。人間対自然。冒険映画の迫力の中に、重いテーマが問いかけられている。
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映画批評
萩野亮
二〇一五年のハリウッドは、あいもかわらぬリメイク&リブート合戦の大いなる収穫の一年だったけれど、本作はまさかの『白鯨』リブート(違うか)。十九世紀の大著にあったはずの犀利な描写と狂気の気配は、しかしクジラとの闘いに単純化されており、旧作のファンが首をかしげるところまで正しくリブートされている。とはいえ、ロン・ハワードがたがいの最高のキャリアといっていい「ラッシュ」のクリヘムと組んでのぞんだ演出の冴えは、前半部分のそこかしこにみとめられる。
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