クリーピー 偽りの隣人の映画専門家レビュー一覧
クリーピー 偽りの隣人
「岸辺の旅」の黒沢清監督が前川裕の日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作を映画化。6年前の失踪事件を調査する犯罪心理学者が、不可解な隣人一家の関係に気付いたことから想像を絶する恐怖を体験する。主演は4度目の黒沢作品への出演となる西島秀俊。共演は「残穢 ざんえ 住んではいけない部屋」の竹内結子、「好きっていいなよ。」の川口春奈、「GONIN サーガ」の東出昌大、「劇場版 MOZU」の香川照之、「ソロモンの偽証」の藤野涼子、「陽光桜 YOKO THE CHERRY BLOSSOM」の笹野高史。黒沢清と「先輩と彼女」の監督を務めた池田千尋が共同で脚本を手がけ、音楽を「万能鑑定士Q モナ・リザの瞳」の羽深由理が担当する。
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映画評論家
北川れい子
笑っちゃうほど不快で気色がワルいホラー・サスペンスである。黒沢清監督らしからぬスタンドプレイが目立つ、グロを全面に押し出した演出。実際に何度か笑ったりも。例えば主人公夫婦が飼っている犬の扱い。きっと怪しい隣人の香川照之が……。が、これが肩すかしで、ついニヤニヤ。ま、これなんかはカワイイほうの笑いで、終盤は悪趣味、大芝居に対する爆笑、そうか、黒沢監督は観客サービスもできる人なんだ。で思った。西島秀俊の役と香川の役を入れ替えてほしかったなと。
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
「岸辺の旅」よりこういうひどいもののほうが観て楽しい! 90年代の黒沢清ジャンル映画量産時代に円熟を経て回帰したかのよう。カットの質と方向性が昔と違う。元々揺らいでいたが、今回はアメリカ映画から離れた印象。本作の陰惨さは世界に在りうる邪悪を示していてこういう映画を観ることでこちらは死なずに生きることができるなあと思う。西島香川の組み合わせが絶妙。格好良いアホの男と格好よくない邪智の男の奇妙な闘い。そして竹内結子のエロス。満足。
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映画評論家
松崎健夫
黒沢清の映画には、ときおり風が吹いている。その風は目に見えないはずなのに、カーテンの揺れなどで視覚化される。本来であれば爽やかな風であるべきものが、目に見えないものを視覚化したと解釈することで不穏さが生まれる。そこに低音のノイズが乗り、歪な住宅地が“顔”となり、其れらが堆積して映画全体を不穏さが包み込む。不穏と感じるのは、役者の怪しげな表情や台詞の不思議な間によるものだけではない。誰もが観たかった黒沢清が帰ってきた、唯々そのことに歓喜。
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