奇蹟がくれた数式の映画専門家レビュー一覧
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翻訳家
篠儀直子
この物語ならこれを語らなければいけないだろう、これを見せなければいけないだろうというものが全部きちんと押さえられていて、あまり強い刺激のない、安心して見ていられる展開と演出。理数系エリート役での出演作の日本公開が続くジェレミー・アイアンズにあって、本作でのニュアンス豊かな演技は出色。個人的には元々興味のあった題材で、ケンブリッジでさえ戦争が始まるとこんな抑圧的な雰囲気になるのかと愕然とする。意外に出番の多いバートランド・ラッセルの洒脱さが楽しい。
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映画監督
内藤誠
決闘で夭折したガロアもそうだが、数学の天才といえども社会に生きている以上、ただ紙とペンを持って問題を解いていればいいというわけにはいかない。インドの天才数学者ラマヌジャンが彼を認めたケンブリッジ大学の教授に招かれて英国に渡る話だが、デヴ・パテルとジェレミー・アイアンズが好演。第一次大戦下、トリニティ・カレッジの重々しい雰囲気が実物撮影の効果で圧巻。ここがニュートンやB・ラッセルのいた所かと感慨に耽りはじめたとたん、民族的・階級的差別の嵐が吹く。
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ライター
平田裕介
もともと数字に弱く、三十代なかばから九九の“七の段”がまごつくようになった身としては劇中に登場する数式や論理などは、まったく意味不明。そういうわけでドラマに注視するのだが、ただただラマヌジャンの不遇ぶりを強調しているだけで、そこから一越え二越えしないまま終わっている。それで彼は立派な数学者でありましたみたいなクレジットを出されてもなぁ……といったところ。ただし、ケンブリッジ大トリニティ・カレッジの荘厳な佇まいをたっぷりと拝ませてくれるのは◎。
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