セトウツミの映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
北川れい子
定点観測ならぬ定点お喋り。街中を流れる川に沿った、ちょっとした広場の短い石段。座り込んだ2人の背後には人や車が往き来し、広場にも人が出たり入ったり。ポイントはあくまでも彼らの関西弁の他愛ないお喋りだが、その日変りのお喋りが、座り込んだ2人の周辺の人々の動きと自然体で反応し合っているのがみごとで、まるでゆるーい連続コントのよう。原作はコミックだそうだが、シンプルな設定の中に青春という季節の宙ぶらりんさをここまで表現した演出と主演2人にパチパチパチ!
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映画文筆系フリーライター、退役映写技師
千浦僚
渋い。しかしおもしろい。逆説的に充分に映画だとも感じられる。本作は原作が漫画だが、昔もただ小咄をしている漫画があったと思った。『ビー・バップ・ハイスクール』の後半。その映画版は活劇的なところをやって傑作となっていたが。映画において人物がただ会話する、というのは九〇年代タランティーノ以降の発見(あるいは開き直り)だが、そのルーツはロメールあたりかもしれない(タランティーノはビデオ店員時代ロメール好き)。そういうものの日本版をやるときが来たか。
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映画評論家
松崎健夫
僕が関西から上京して感じた違い。それは、本作で延々と描かれている会話にある。相手からどんなに〈退屈〉な会話を振られても、関西人の多くはそれを受け止めようとする。〈意味なさげ〉な会話は、相手を放っておかない“やさしさ”のようなものであり、関西の言葉が持つ独特の“どぎつさ”と“やわらかさ”が、その印象を高めている。それゆえこの映画は、〈退屈〉や〈意味なさげ〉なのが面白いのだ。下町人情とはまた異なる、“ボケとツッコミ”という名の人情がここにはある。
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