ノベンバー・クリミナルズの映画専門家レビュー一覧
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翻訳家
篠儀直子
「D・ボウイオマージュ映画にハズレは少ないの法則」に則った、美しい青春映画。10代のまっすぐな気持ちから始まる「捜査の真似事」が、やがて痛ましい喪失と人生のはかなさ、かけがえのなさをめぐる物語へと転換されていく。音の「ずり上がり」を多用したテンポのよさと、各シーンの丁寧な演出。少年少女と親たちの関係も端的かつ的確に描写され、心に刺さる人は多いはず。変人アンセルとしっかり者クロエはまれに見るお似合いのカップルで、一緒にいるのを見るだけでわくわくする。
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映画監督
内藤誠
アンセルとクロエのカップルは、感受性もあり、演技も快調で、高校生活を描いている部分はおもしろい。しかしアンセルが敬愛して引用したデヴィッド・ボウイの「行く先は分からない。でもきっと退屈しない」という言葉通り、彼の親友が殺され、物語はワシントンD.C.に起きた麻薬事件に移っていく。アンセルが警察を差し置いて、フィルムノワールの主人公になるのは無理があり、物語の中心が若いふたりの友だちや家族との関係、進学問題など、サリンジャーの小説風になると、安心。
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ライター
平田裕介
実は犯罪多発地域(最近は落ち着いているらしい)であるワシントンDCの雰囲気が、物語にも全体を覆う雰囲気にも巧く醸し出されていてイイ感じ。とはいえ、母と親友の死を乗り越えることになる主人公の心象やその過程がいまいち伝わらず、彼の捜査も高校生ゆえに限界ばかりでクロエ嬢とのセックスに夢中になったりするのが十代ならではのリアリティとして映るが、それはサスペンスとしてどうなのかと思ってしまう。とりあえず、主人公ふたりのカップルぶりが可愛らしく思える一品。
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