神聖なる一族24人の娘たちの映画専門家レビュー一覧

神聖なる一族24人の娘たち

ロシア連邦の中で、500年に渡って独自の言語と文化を保ってきたマリ人たちの間に伝わる説話を映画化。理想の夫を選ぶ目を養うため、キノコの形を丹念に調べる女性や、醜い森の精霊から呪いをかけられた女性など、24人の娘たちの“生”と“性”の物語。監督は、ヴェネチア国際映画祭などで受賞歴を持ち、ロシア映画の第三世代として高い評価を得ているアレクセイ・フェドルチェンコ。
  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    ロシアのヴォルガ川流域に住む少数民族マリ人にカメラを向けた。この民族はキリスト教とは異なる独自の多神教信仰を何百年も守ってきた。モスクワからたった643㎞離れるだけで、もうこんな異界が広がってしまうのかとワクワクさせられる。24人の女性たちの挿話を見るうちに、民俗学調査に参加したような生々しい異文化体験を味わえる。時に美しく哀切で、時にユーモラスでおぞましく、時にエロティック。多様性に満ちたロシア映画の新たな胎動を予感させる一本となった。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    雪の夜に、囲炉裏ならぬ暖炉の前で昔話を聞いているような、そんな素朴な田舎料理みたいな映画。ただし、一つ一つの挿話があまりにも断片的すぎて、ちと分かりにくいという弱みも。しだいに猥談じみた野卑な舌ざわりが、あまりにも素材のまんまで。いや映画というのはもう少し味付けというか工夫が必要ではと思うものの、妙にそのそっくりそのままが口中に残って。この撮影、そして衣裳の美術感覚! それが終幕、24人の娘たちのポートレートでぱっと花開くという、捨てがたい一作。

  • 映画ライター

    中西愛子

    ロシア西部のマリ・エル共和国を舞台に、“オ”から始まる名前の24人の娘たちの小話がつまった摩訶不思議な映像詩。独自の文化・宗教を持つマリの伝承に基づいた、センシュアルで時に奇妙なひとつひとつの物語。衣裳や日常の色彩はシンプルで綺麗だし、かわいらしくも大らかなエロスが自然の中に溶け込んでいて、命の蕾を開花させていく娘たちを素手でとらえたような(地元の素人と女優が混在して出演)映画として見応えがある。女の子の魂が神話の中に息づいている愛すべき一本。

1 - 3件表示/全3件