ポバティー・インク あなたの寄付の不都合な真実の映画専門家レビュー一覧
ポバティー・インク あなたの寄付の不都合な真実
途上国開発の指導者として地位を獲得してきた先進国の貧困産業に迫るキュメンタリー。慈善活動ビジネスが成長する一方で、先進国から一方的に押し付けられる援助により途上国側の自活力が潰されているという実態を追いかけながら、支援のあり方を問いかける。監督は、貧困削減に向けて活動する人々の国際的連携を目標とするプロジェクト『ポバティーキュア』の設立者でもあるマイケル・マシスン・ミラー。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
ハイチとガーナに取材し、NGOや国際機関の援助活動が、現地の産業を圧迫し、さらなる貧困を生み出している、という皮肉な現状を訴える。私たちの寄付がそんな結果を招いているとは、やるせなくなる。大量の支援米のせいで米価格が暴落し、ハイチの稲作農家を壊滅させた。地元の人のコメントが印象深い。「栄養バランスにも問題が生じている。自分たちで作っていた80年代、米を食べるのは週3回だったのに、今では毎日3回というありさまだ」とのこと(苦笑)。
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脚本家
北里宇一郎
海外援助を名目に、かの地の政権と手を結び、暴利を貪る日本企業のことは聞いたことがあるけど。寄付や援助が巨大産業となる反面、その国の人たちの自立を妨げている。この現状が、ひじょうに論理的、具体的に描かれ、眼が開かれる想い。U2のボノの善意の活動が、一方的な押しつけにすぎなかったのでは、という問いかけが、こちらの胸にも刺さる。可哀そうでも弱くもない地元の人たちの発言、活動の画面が重く。多少、プロパガンダの臭みはあるが、映画には記録・告発の側面もあって。
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映画ライター
中西愛子
贅沢や粗末へのいましめとして、“アフリカには飢えた子どもがいるんだから”という一言がある。その有無を言わせぬ最悪のイメージの下、繰り広げられる営利目的の途上国開発は、いまや巨大産業なのだという。その循環の中で起こっている見えづらい世界の仕組みを、本作は具体的な例を数多く挙げて解き明かし、疑問を投げかける。問われていることは難しい。究極すぎて混乱する。ただ、慈善活動への見落としがちなひとつの視点を明確に提示していることは有益だ。考えるきっかけになる。
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