将軍様、あなたのために映画を撮りますの映画専門家レビュー一覧

将軍様、あなたのために映画を撮ります

    韓国人女優チェ・ウニと映画監督シン・サンオクが北朝鮮に拉致された事件を追ったドキュメンタリー。チェ・ウニ本人やその子供たち、当時事件を調査した香港の捜査官や元CIA職員らのインタビューを通し、1978年の拉致から86年に二人が亡命するまでの顛末を暴く。故・金正日総書記の拉致に言及する肉声が録音テープを通じて初めて公開された本作は、第66回ベルリン国際映画祭などで大きな反響を呼んだ。
    • 映像演出、映画評論

      荻野洋一

      韓国の巨匠・申相玉監督と、妻でスター女優の崔銀姫の北朝鮮による拉致事件の真相をえぐり出す出色のドキュメンタリーである。故・金正日総書記が熱心なシネフィルであることは昔から有名で、私たちも学生時代には「日本のピンク映画さえ全部コレクションしているらしい」などと噂したものだ。ところで当時、池袋にあった韓国文化院で申相玉の作品を上映してくれなかった謎が、今ようやく氷解した。あのころ韓国では拉致ではなく亡命(巨匠の裏切り)と解釈されていたわけだ。

    • 脚本家

      北里宇一郎

      韓国の監督・申相玉と女優・崔銀姫は北朝鮮に拉致されたのか、金正日との関わりはどうだったのか。それは興味深いことだけど、表面をさらりと撫でてるだけの印象。「プルガサリ 伝説の大怪獣」を観ると、申監督が秘かに主張を込めているのは確かで。同じ映画人なら、作品の裏を読んで、かの国における彼の想いを探ってほしかった。そこから金正日に対する愛憎関係(?)も見えてくるのでは。“北朝鮮は怖い国”てなことを主張するドキュメントなんて掃いて捨てるほどあるじゃないか。

    • 映画ライター

      中西愛子

      韓国と北朝鮮。映画界に起きた拉致事件を巡る、貴重なドキュメンタリー。韓国の国民的女優・崔銀姫が78年に拉致され、彼女の行方を追っていた元夫の映画監督・申相玉もまもなく姿を消す。ふたりは映画マニアだった金正日の下、潤沢な資金で映画製作をするようになっていた。真相はどうだったのか。いまだに謎は多いという。金正日について言及する申相玉の極秘肉声テープ(日本語……)の衝撃。映画プロデューサーと監督の最果ての野望とは何なのか。葬られた歴史から何かが見える。

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