トレジャー オトナタチの贈り物。の映画専門家レビュー一覧
トレジャー オトナタチの贈り物。
ルーマニア発の実話を基にしたコメディ。第68回カンヌ国際映画祭ある視点部門・ある才能賞受賞作品。隣人から怪しい宝探しの話を持ち掛けられたコスティは、半信半疑ながらその話に乗る。金属探知機の業者も加わり、3人のおじさんは宝探しを始めるが……。監督・脚本は、第59回カンヌ国際映画祭でカメラドールを受賞したコルネリュ・ポルンボユ。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
近年は充実ぶりが喧伝されるルーマニア映画界から、人を喰ったオフビートコメディが届いた。借金苦にあえぐ隣人に財宝発掘を誘われ、にわかにその気になる主人公夫婦の生真面目な強欲さ。金属探知機のレンタル代さえ妻の実家に頼るあたりですでに痛々しいが、発掘当夜に起こる仲間割れに至っては正視できない。ポルンボユ監督はさぞかし人間不信の作家なのでは? 共産政権前に曾祖父が埋めた財宝とやらが表象するのは、旧ルーマニア国家への安直な懐古主義に対する警鐘だろう。
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脚本家
北里宇一郎
宝探し映画といっても、大げさなものじゃなく、怪しげな探知機を使ってスコップで庭を掘り起こすというのが、そこはかとなくオカシい。あまりの疲労で口げんかがはじまって、ひとり離脱の顛末も、脱力の微苦笑。肝心のおタカラには、共産主義から長い独裁政権を経て現在に至った、ルーマニアの政治状況への皮肉が込められているのだろう。淡々の筋運びはネラいだろうし、トボケたおかしさを目論んでいるのも分かる。が、単調すぎ。もうひとヒネリふたヒネリの展開をという欲も出て。
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映画ライター
中西愛子
かつて共産党台頭前に祖先がある地に埋めた宝を、一緒に探してほしいと失業中の隣人に頼まれた男。家族と慎ましく暮らす彼は、半信半疑ながら協力することになる。日常感たっぷりで、オフビートな笑いも効いたドラマだな、と思っていると、宝探しのシーンになるや、やたら地道でリアルな作業を淡々ととらえ続ける、ドキュメンタリーのような趣に。どうやら、この部分は監督の実体験を生かしたよう。映画の捻ったオチも意外と好き。裏テーマは、ルーマニア的、富の分配かも?
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