ちょっと今から仕事やめてくるの映画専門家レビュー一覧

ちょっと今から仕事やめてくる

第21回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞に輝いた同名小説を成島出監督が映画化。疲労から駅のホームで意識を失う隆。幼馴染を名乗る謎の男ヤマモトに助けられ彼と過ごすうちに隆は本来の姿を取り戻すが、ある日ヤマモトは3年前に自殺していた事を知る。仕事に心身ともに追い詰められた若者・隆を「夏美のホタル」の工藤阿須加が、彼を絶望の淵から救う爽やかな笑顔の謎の男ヤマモトを「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の福士蒼汰が演じる。
  • 評論家

    上野昻志

    工藤阿須加と福士蒼汰の組み合わせが生きている。とくに地味なネクタイの新入社員として、暴君さながらの部長(吉田鋼太郎)にパワハラされる工藤は、ピッタリはまっていた。おそらく彼を見て、オレみたい、と思う人もいるだろう。そんな工藤を、小学校の同級生と偽って助けるアロハ・スタイルの福士は、このような人がいれば、という作り手の思いを体現した存在なのだろう。ただ、小池栄子から、彼の秘密を明かされる場面に入るカットバックが説明過多な感じもしたが、念押しには必要か。

  • 映画評論家

    上島春彦

    この物語で二時間弱は長い。主人公の若者の辛さは描けているが大体思った通りに進行し、意外性がないのだ。だから終盤の事情説明がバヌアツの観光映画みたいになっちゃった。やりたかったのは、いい大人が鞄を振り回しながらスーツ姿で横断歩道を駆けてくる画面だろう。分かるものの、それが意味するのは「彼の個人的解決」でしかない。見終わってもどんよりした気分は変わらなかった。よその国の子供に奉仕するより、日本社会を変えてもらいたい。せめて同僚を救うのがスジでは?

  • 映画評論家

    モルモット吉田

    大手スーパーへの批判を巧妙に隠した「スーパーの女」の様に、中小企業を舞台にすることで大手でも製作可能だったと肯定的に観るか、大手ブラック企業事情を思えば白けるしかないかは兎も角、「ソロモンの偽証」の女子生徒へのいじめシーンの様な加虐的描写になると成島演出は突出し、パワハラ場面は均衡を崩すほどの狂気である。それが家族や南国の楽園に救いを求め始めると途端に軽薄に。主演2人の演技では持たず、吉田のハイテンションな怪演と、黒木、小池らで救済された感。

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