ホームレス ニューヨークと寝た男の映画専門家レビュー一覧
ホームレス ニューヨークと寝た男
モデル兼ファッション・フォトグラファーのマーク・レイに密着したドキュメンタリー。快活な話術でニューヨークの街ゆくモデルやファッショニスタたちに声をかけシャッターを切るマーク。そんな彼が仕事後に向かった寝床は、あるアパートメントの屋上だった。監督は、ピエール・カルダン等の企業PVを手掛け、本作が長編デビューとなるオーストリア出身のトーマス・ヴィルテンゾーン。音楽を「ジャージー・ボーイズ」のカイル・イーストウッドとマット・マクガイアが担当する。
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映像演出、映画評論
荻野洋一
原題は“HOMME LESS”。ホームレスという意味と、アパレルで使う「男」を意味する仏語「オム」を架けている。この題が本作を言い尽くしている。雑居ビル屋上に野宿し、着替えはジムのロッカーに仕舞う。ファッション業界の片隅で仕事を探す主人公は惨めだが、おのれの滑稽さに自覚的でもある。ある日は陽気でエネルギッシュ、ある日は落ち込む。だがそれだけだ。私たちフリーランスは皆そうやって生きている。彼は負け犬だ。負け犬でもせめて本気の遠吠えを聴かせてほしい。
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脚本家
北里宇一郎
原題は“HOMME LESS”。“HOME”じゃないところが皮肉。ニューヨークに憑かれて抜け出せなくなった男の記録。ホームレスは自由な生き方、なんて発言は一かけらもない。フォトグラファーとかエキストラで食っているせいか、恰好だけは崩さない。そこに彼の、人としての矜持を感じて。が、もはや骨と皮の人生。それでも街にしがみついて生き続ける。こういう男もいるんだという、その存在を映像に刻みつけたのはいいにしても、そこから先に踏み込まないことの物足りなさも。
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映画ライター
中西愛子
モデルで写真家。50代のイケメン。昼は颯爽とNYを闊歩するマーク・レイ氏、実はビルの屋上で暮らすホームレスなのであった。いい意味で、観始めた時と、観終わった時の被写体の印象がこんなに変わるドキュメンタリーは珍しい。この方、変わってるけど、すごくピュアな人なんじゃないか。元モデル仲間で、いまは映像作家をするオーストラリア人の監督が、彼との再会を機に始めた企画。3年間密着している。この信頼関係が一番マジカル。生きていればいろいろあるよ。肩の力が抜けた。
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