太陽の塔の映画専門家レビュー一覧

太陽の塔

1970年開催の日本万国博覧会(大阪万博)テーマ館の一部として岡本太郎の意匠により制作され、大阪のシンボルのひとつとして親しまれる太陽の塔にフォーカスしたドキュメンタリー。ルーツや関係者の証言等を通し、太陽の塔に込められたメッセージに迫る。監督は、第61回カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルのチタニウム&インテグレーテッド部門にてグランプリを獲得した『Sound of Honda/Ayrton Senna 1989』に携わるなど、数多くのMVやCMを手がけてきた関根光才。特集『カリテ・ファンタスティック!シネマ・コレクション2018』にて先行上映。
  • 映画評論家

    北川れい子

    わっ、わっ、解説と解釈と考察と推察などetc.、岡本太郎と“太陽の塔”について語る錚々たる方々28人のことばの洪水に押し流され、結局、気が付けば、このドキュメンタリーを観る前と同じ状態に戻っていて。ことばによる情報は次のことばによる情報にすぐとって代わり、また次のことばが……。土偶や土器に関する情報も鮮度不足で、そもそも映像クリエイターだという関根監督の太郎観が見えてこない。他人のことばにおんぶにだっこ、ちょっとヤラセ映像を入れたドキュでした。

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    比較するのもおかしいが本作は先頃公開されたドキュメンタリー(PR映画?)「ピース・ニッポン」(監督中野裕之)の五万倍は良く、観甲斐がある。だがそれだけに本作の編集しすぎ、話者の発言の刻み方は気になった。また、本作と企画のパルコは、岡本太郎が表現し、赤坂憲雄、関野吉晴、Chim↑Pom、西谷修らが語った認識や世界への批判を受け止められているのか。……もっとも本当に爆発してしまえばまとまらないが。切り下げて成立した? と疑い続ける。しかし観られてほしい作品だ。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    太陽の塔は「20世紀少年」でもモチーフにされていたが、設計者・岡本太郎は誰も想像できなかった未来を“よげん”している。〈人類の進歩と調和〉という大阪万博のテーマにあえて異を唱え、やがて科学の進歩が導くであろう未来の危機に対して警鐘を鳴らしていたのだ。彼の創作意図を、本作は21世紀の日本社会と対比させながら考察してみせている。つまり、太陽の塔を描いたドキュメンタリーの姿を借りながら、物言えぬ傾向にある現代の日本社会を批評してみせているのである。

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