20センチュリー・ウーマンの映画専門家レビュー一覧
20センチュリー・ウーマン
「人生はビギナーズ」のマイク・ミルズ監督が自身の母親に着想を得て制作したドラマ。シングルマザーのドロシアは思春期を迎える息子ジェイミーのために、ルームシェアする写真家アビーとジェイミーの幼馴染ジュリーに協力を求め、彼の成長を後押ししていく。自由奔放な母親を「キッズ・オールライト」のアネット・ベニングが、パンクな写真家を「フランシス・ ハ」のグレタ・ガーウィグが、友達以上の関係の幼馴染を「ネオン・デーモン」のエル・ファニングが演じる。第89回アカデミー賞脚本賞ノミネート作品。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
アネット・ベニングが良過ぎて彼女ばかり見てしまう。ほんとうに豊かな年の取り方をしていると思う。「人生はビギナーズ」の父親に続いて母親と自分の話で、筋立てとしては如何にもこの監督らしいセラピー映画だが、正直に言うとCM的と呼ぶしかないスタイリッシュな画面作りが好きではない。知的でハイセンスなトリヴィアに彩られた台詞も含め、小洒落たアメリカ文学みたいな作品だ。もう少し地味な絵で仕上げてくれれば支持出来たのに。エル・ファニングは久々に等身大の役です。
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映画系文筆業
奈々村久生
自分や家族といった自伝的な題材で映画監督としてのキャリアをスタートさせたミルズ。ナイーブでミニマムに見えたその世界観だったが、彼を取り巻く人々や彼自身の身に起こった出来事はADHDや同性愛などいわゆる世間のステレオタイプから外れており、必然的にマイノリティへの考察となる。それは作品を重ねるごとに強度と普遍性を増し、描く対象を女性にフォーカスした本作では、彼女たちに向けた眼差しがジェンダーフリー的な女性観となって力強いメッセージを形作っている。
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TVプロデューサー
山口剛
こんなに科白の面白い映画は滅多にない。キャラクターがしっかり出来ているからだ。笑い通しだった。70年代後半、母親は大恐慌時代の生き残りと思春期の息子に言われているが、当時としては先進的なシングルマザー。彼女を含め三世代を代表する三人の魅力的な年上の女性が息子にほどこす男性教育が映画の主題だ。「アマルコルド」を思わせる。この時代にもかかわらず男性がみなフェミニストでマッチョイズムの男が出てこないのも珍しい。監督は男性だが女性映画の傑作。
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