ナミヤ雑貨店の奇蹟(2017・日)の映画専門家レビュー一覧
ナミヤ雑貨店の奇蹟(2017・日)
直木賞作家・東野圭吾のベストセラー小説を「彼女の人生は間違いじゃない」の廣木隆一監督のもと映画化。以前ナミヤ雑貨店があった廃屋に忍び込んだ敦也たち。32年前に書かれた悩み相談の手紙が届き、彼らは戸惑いつつ当時の店主に代わり返事をしたためる。不思議な手紙のやり取りをする敦也を「暗殺教室」シリーズの山田涼介が、ナミヤ雑貨店の店主だった浪矢雄治を2008年に紫綬褒章を受章した西田敏行が演じるほか、「いつまた、君と ~何日君再来~」の尾野真千子、「武曲 MUKOKU」の村上虹郎らが出演、時代を超えてつながる思いを紡いでいく。
-
評論家
上野昻志
2012年に1980年のナミヤ雑貨店にタイムスリップした3人の若者は19歳、ということは1993年生まれか。それにしては生まれる前の時代の変化をよくご存じで、なんて余計なことは考えない方がいいだろう。なにしろ、これは、ナミヤ雑貨店と丸光園という養護施設に関わった者との間で交わされる手紙によって、どれほど人が幸せになったかという人情話なのだから。下手な詮索などしちゃいけません。ただ、そのわりには、あまり泣けなかったけれど、これは見る側の問題かね。
-
映画評論家
上島春彦
複雑な原作をまとめる物語が秀逸。ただ手紙のやり取りの頻度で理解できない部分があった。閉じたシャッターの内と外で時間の流れ方が違うからだろうが、無駄な感じがしちゃうのだ。伊坂幸太郎原作のあの映画っぽく、ある歌が生まれて育ち流通していくコンセプトも加味。こればっかりは山下達郎さんに頑張っていただくしかない。新たな代表作と呼べる出来で感涙ものである。この奇蹟は世界全体でなく、あくまである施設の迷える子羊たちを救うところに味がある。ささやかなのがいい。
-
映画評論家
モルモット吉田
原作未読だが手紙が軸になるだけに小説なら成立しそうな話に思えるが、台詞で設定を説明してばかりいるので段々勝手にせいという気分に。奇蹟と言ってしまえばご都合主義を連発できるのか。3つの時制を往復させ、それらが全て過去に因縁があって繋がっているという設定を消化することのみに腐心し、挙句に特定の個人の未来を変えたり、雑貨店の店主が恩着せがましく人々から礼状を求めるのも不快感が積もる。廣木隆一だけに安易な催涙シーンや死を直接描かないのは安心できるが。
1 -
3件表示/全3件