ギフト 僕がきみに残せるものの映画専門家レビュー一覧
ギフト 僕がきみに残せるもの
難病ALSを宣告された元NFLのスター選手が、やがて生まれてくる息子に贈るために撮影したビデオダイアリーから生まれたドキュメンタリー。家族のために生きたいと願う夫とその妻、彼を支援する周囲の人たちがユーモアを交え日々を乗り越えていく姿を映し出す。出演は、元NFLニューオーリンズ・セインツのスティーヴ・グリーソン、妻ミシェル・ヴァリスコ、アメリカのロックバンド『パール・ジャム』のエディー・ヴェダー、元NFLのスコット・フジタ。監督は『プリント・ザ・レジェンド』のクレイ・トゥイール。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
これはALSに冒されたひとりの元有名アメフト選手のドキュメンタリーではない。ALSと最期の最期まで闘い抜くこと、ALSに打ち勝つまで闘い続けることを選んだ男とその周囲のひとびとによる経過報告である。そして、その闘いのすべてを撮り残すことを選んだひとびとの記録である。しかし、ここに映っているのは悲壮感でも絶望感でもヒロイズムでもない。たとえ微かなものであったとしても、希望でありユーモアであり幸福感なのだ。映像には、映画には、こういうことが出来る。
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映画系文筆業
奈々村久生
アメリカでアメフトのスター選手といえば勝ち組の中の勝ち組だろう。自らの肉体で栄華を極めた人物にとって、徐々に衰えていく筋力と日々向き合うことは、地獄のような苦しみに違いない。症状が進むにつれて話すのもままならなくなってくるナレーションがその容赦ない現実を物語る。弱い自分の姿をさらけ出しながらも、それがかえって人々に勇気を与え、病と闘う姿までもが勇姿になってしまうのはやはりスターたる由縁。スターはどんな状況になってもスターなのだと思わざるを得ない。
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TVプロデューサー
山口剛
セインツのグリーソン選手の歴史に残るパントブロックを私もテレビで見て感動した。その彼が不治の病ALSを宣告され、生まれる息子のため撮り始めたビデオダイアリーが基になっている。砂田麻美の映画で定着した「エンディングノート」だ。1500時間にわたるビデオからトゥイール監督は私的ドキュメンタリーのレベルを超えた完成度の高い作品を作り出した。明朗で知的なスポーツマンが主役なので、変な悲壮感がなく、夫婦愛も介護の実態も社会活動も気持よく観られる。
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