いつも心はジャイアントの映画専門家レビュー一覧
いつも心はジャイアント
スウェーデンのアカデミー賞にあたるゴールデン・ビートル賞で作品賞など3部門に輝いた人間ドラマ。頭骨が変形する難病を抱え、精神を病む母と離れて暮らすリカルド。差別を受けつらい日々が続いていたが、ペタンクという球技との出会いが彼の人生を変える。本作で長編デビューを果たしたヨハネス・ニホーム監督が、自身の経験を基に、懸命に生きるリカルドを彼の内に広がる心象風景とともに描いていく。
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批評家。音楽レーベルHEADZ主宰
佐々木敦
誰もが『エレファント・マン』を思い出してしまうことだろうが、内容はまったく違います。ペタンクという球技は全然知らなかったのだが、面白そう。まるで実話を基にしているかのような手触りの人間ドラマの部分と、ジャイアントになった時の非現実的な描写(創意工夫が素晴らしい!)の落差が、あるようでない。そこが良い。ありきたりな感動に落とし込まない製作者側の知性と誠実さを随所に感じる。ハリウッドのような莫大な予算を掛けなくても、こういう映画は造れるのだなあ、と。
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映画系文筆業
奈々村久生
頭骨の一部が巨大に変形したリカルドの風貌は、否応なく「エレファント・マン」を彷彿とさせ、異形ゆえの悲哀のようなものを勝手に感じ取ってしまいそうになる。下手をしたら差別よりタチが悪い。劇中ではリカルドの経験する厳しい現実を醜く、巨人の出てくる空想の世界は美しく描かれているが、事態はそんなにシンプルではない。ただ、人は自分の想像できないことに関しては驚くほど不寛容だから、リカルドのビジュアルや彼の視野に触れることは何らかの意義があるはずだ。
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TVプロデューサー
山口剛
淡い光で描き出されるスウェーデンの自然は大変美しく、主人公の逆境、孤独を際立たせる。それに比較し巨人が山野を跋渉するファンタスチックなシーンはいささか面白さ迫力に欠ける。全体的に映画はファンタジーよりリアリズムに軸足を置いたような印象を持った。主人公に強い憐憫の情は感じるが、感情移入するほどの共感を覚えないのは、ジャイアントに託した空想の中の自由、解放のイメージが弱いからだろう。この種の映画に観客が期待するある種の結末の爽快感が欲しかった。
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