累 かさねの映画専門家レビュー一覧

累 かさね

松浦だるまの同名コミックを実写映画化。伝説の女優を母に持ち、天才的な演技力がありながら、醜い容姿を恨み続けて生きてきた累。母は累に、キスした相手の顔を奪える不思議な口紅を遺していた。累は、美貌に恵まれながら花開かずにいる女優・ニナと出会う。監督は、「ストロベリーナイト」の佐藤祐市。出演は、「となりの怪物くん」の土屋太鳳、「心が叫びたがってるんだ。」の芳根京子、「破門 ふたりのヤクビョーガミ」の横山裕、「ママレード・ボーイ」の檀れい、「幼な子われらに生まれ」の浅野忠信。
  • 映画評論家

    北川れい子

    ムチャ振りとしか言いようがない設定のホラーふうサスペンスだが、あり得ない話を実写化するスタッフ、キャストの意欲は買いたい。魔力を持つ1本の口紅。女はもともと口紅の色を変えただけで気分まで変化することがあるが、その口紅を塗ってキスをすると相手の顔をチェンジ、物理的には不可能でも心理的には無きにしも非ず。ただ美醜の交換をする2人の顔の違いがいまいち曖昧で、演技的な区別もメリハリ不足。舞台女優というその舞台がアングラふうなのは、話がアングラ的だから?

  • 映画文筆系フリーライター、退役映写技師

    千浦僚

    主演女優ふたりはやりがいがあっただろう。基本的な設定に、演技者として明確な仕事が用意されている。これはこの欄で度々出会う、よく読まれ、その面白さが認められている漫画を原作とする映画のほぼすべてが持っている、根本的な構想やキャラクターの強さだ。容貌の美醜、演劇の肉体性など、そもそも実写化されることに向かうような要素もあった。おもしろい映画になっていた。ただやはりまだ原作漫画の幅や徹底に負けてはいないか。原作漫画に実写映画化が勝つことはないのか。

  • 映画評論家

    松崎健夫

    〈外見〉と〈内面〉は其々に影響を与えるのか? という命題をもとに、「偽物が本物を超える瞬間」を本作は描いている。トリッキーなアイディアに惑わされがちだが、“ふたりでひとり”を演じ分けた土屋太鳳と芳根京子は、「フェイス/オフ」のジョン・トラヴォルタとニコラス・ケイジに匹敵するアプローチを感じさせる。『かもめ』や『サロメ』の物語自体を作品に取り込みながら、登場人物の人生にもなぞらせてゆくという構成もまた、劇中の「虚構が現実を超える瞬間」を導くのだ。

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