愛の病の映画専門家レビュー一覧
愛の病
2002年に起きた『和歌山出会い系サイト強盗殺傷事件』を映画化。出会い系サイトのサクラとして働きながら、工員の真之助に貢がせているエミコ。一目惚れした解体作業員アキラに障がいを持つ姉がいることを知り、彼女を殺害しようとエミコは真之助に連絡する。出演は、TV『ドS刑事』の瀬戸さおり、「ポエトリーエンジェル」の岡山天音、「HiGH&LOW」シリーズの八木将康、「島々清しゃ(しまじまかいしゃ)」の山田真歩、「母の恋人」の佐々木心音、「向日葵の丘 1983年・夏」の藤田朋子。脚本を「LAST LOVE 愛人」の石川均、音楽を「鬼火」「机のなかみ」の神尾憲一が担当。監督は「スキマスキ」「好きでもないくせに」の吉田浩太。
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評論家
上野昻志
結婚を餌に男から金を騙し取る口実に、「ヤクザの組長の娘」を装うというのは、純然たるフィクションではリアリティがないと退けられるだろうが、実際の事件がそうだとなれば、受け容れるしかない。これは、映画にとってはハンディになるが、それを、さほど気にならずに見せてしまうのは、髪型を変えただけで、印象がガラッと変わる瀬戸さおりなら、男を騙すのは簡単だろうと思わせる(笑)一方で、喰い物にされる岡山天音が、イノセントな男の愚かさを自然に表現しているからだ。
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映画評論家
上島春彦
これも「全員死刑」同様、実話の映画化が売り。上手いのは主人公の悪女が、カモにする男への態度と本当に恋した男への態度をコロッと変えてしまえる部分である。演ずる瀬戸さおりのお手柄。女は怖いよ。カモ岡山天音も、自らをカモと気づいてからの奴隷キャラで大いに得をした。男ってこうなんですよ。もう一つ見どころは瀬戸の恋した男とその姉の屈折した姉弟愛なのだが、ネタバレなので書けない。ただ全体に平板な感じはあるか。以上四人以外のパートがおざなりなのだ。もう一息。
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映画評論家
吉田伊知郎
日活の映画でもないのに「恋の罪」「凶悪」と並べる惹句に首を傾げたが、実話を元に映画らしい飛躍を見せた掲題作と違い、一応ほぼ事実に沿って展開する本作は常識的な人間ばかりがその範疇でしか行動しないので驚きがない。ヒロインが男声でヤクザを名乗って男を騙すのは面白いが、残念ながら観客は騙してくれない。誰が聞いたって女声なのに、普段会っているくせに気づかない相手の男が馬鹿に見える。本物はオネエ言葉のヤクザと称して切り抜けたらしいが、そっちの方が映画的。
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