レディ・バードの映画専門家レビュー一覧
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批評家、映像作家
金子遊
17歳、高校生活最後の年。人はどうして自分の外見が嫌いで、ここではない都会に憧れ、母親の小言に反発し、スクールカーストの上ばかりを見つめ、髪型や服装で個性がだせると信じ、早く初体験を済ませたいと願い、夜歩きやバンドやマリファナがクールだと思いこむのか。この物語におけるどの要素も小説や映画で描きつくされたものなのに、ひとつ一つが有機的に結びついている。観る側が共感しながら自分の記憶を投影し、物語の半分以上を補っているから、こうも素晴らしいのか。
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映画評論家
きさらぎ尚
田舎も勉強も嫌いだが、都会の大学に進学したいヒロインの気持ちに共感が大。そんな青春に、家庭内によくある出来事を絡め、人気の俳優を配役し、最終的に親子の物語にまとめあげた(ラストで父が娘の母へのわだかまりを解く展開はお見事)G・ガーウィグの平衡感覚を評価したい。でもカンニングに成績改竄、ミサ用の御聖体をポテチみたいにポリボリ食べ、下品な言葉を吐くカトリック系高校のパンクな女子高生を演じるには、S・ローナンは整っていて、しっくりこないのが惜しい。
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映画系文筆業
奈々村久生
ノア・バームバックや「スウィート17モンスター」などの世界観が好きなら期待を裏切らない作風。米インディペンデント映画シーンの顔として活躍したグレタ・ガーウィグの監督作らしく、メインストリームのカテゴリーからはみ出たキャラクターたちを、複雑な親子関係や思春期のカオスと苛立ちに絡め、きめ細やかに描いている。そのジャンル自体は傍流かもしれないが、このジャンルの中ではむしろ正統派の撮り方で、オスカーにノミネートされたのも納得。思いのほかしたたかなのかも。
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