ディヴァイン・ディーヴァス(英題)の映画専門家レビュー一覧

  • ライター

    石村加奈

    「ディーバ」とは「ファビュラスな女性」のことだとあるドラァグクイーンは胸を張る。70歳を過ぎても、背中も曲がっておらず、よく歌い踊り、賑やかに喋る彼女たち曰く、年を取るとは「若さを積み重ねる」ことだと。首や手の皺を見られることを恐れず、花のいっぱいついたカラフルなドレスで着飾る幸福をたのしむ強かさがいい。同時代を生き抜いた8人のディーバたちだが、人生はいろいろ。中でも死んだ男との思い出の曲を口ずさむフジカ・ディ・ハリディの美しい歌声にうっとりした。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    リオのドラァグクイーンの活動拠点となったヒヴァウ劇場の香しき佇まい。夜の路上、彼女たちがヒヴァウに向かう歩きを見るだけで、ここが特別な空間であることがわかる。彼女たちの全盛期は60年代、ブラジルの独裁政権下だ。美の追究によって、醜悪な世界と闘ったのだ。この世は真夏の夜の夢。白々とした朝と共に夢の終わりが来ることを誰よりも意識して生きた人々。美しき夜が消失する一歩手前の閃光をとらえた本作の監督が、劇場創設者の孫娘だという点も感動的な事実だ。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    ドラァグクィーンを題材の映画は数々あれど、これだけ高齢の方々が総出演というドキュメントは珍しい。さすがの貫祿というか、経歴を語る言葉にドラマもあれば重みもある。女装する理由も様々で、ひと口にゲイというけど、そこには多様性があることも分かる。軍事独裁政権下のブラジルで、彼女らがどう生きたか、出演の劇場はなぜ盛況だったのか、もう一つ掘り下げてほしかったという欲も。ただ、見ているうちにゲイとか関係なくなって。老後を迎えた人間の様々な生き方だけが残った。

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