縄文にハマる人々の映画専門家レビュー一覧

  • 評論家

    上野昻志

    縄文の土器や土偶は、確かに不思議だ。なんで、あんな形をしているのか、なんで、あんなにデコラティブなのか、それ自体の奇妙な面白さと同時に、何故、なんの目的で、このような形にしたのかと考え出すとキリもない。弥生の土器が、機能に合わせてシンプルになっているので、なおさら縄文が不思議に思える。だから、多くの人がハマるのだろう。この映画は、そのような人たちの見解を紹介するのだが、それで納得するというより、夥しい発掘物を見せることで、見る者を縄文へと誘う。

  • 映画評論家

    上島春彦

    岡本太郎による縄文美の発見といった歴史的エポックは頭に入っていたが、そういう豆知識の集積とは微妙に次元が違う作品、つまりこれは知じゃなく愛の映画。題名で分かるように縄文文化、端的に言えば土器の奇妙奇天烈さに囚われてしまった人々に監督が驚嘆するコンセプトである。現代人がシビれるのはその過剰な装飾性にあるが、それが普遍性を乗り越え「私にしか分かるまい」という特異性として表れる不思議。マユツバな意見や学説もある気がするが逆に言うとそこが最も面白い。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    学術的な視点も胡散臭い方面も分け隔てなく縄文で結ぶことで何とも奇妙な魅力を放つ熱に浮かされた人々を映し出す。冷笑的にならず、監督自身もハマっていくことで、映画自体も客観性を失っていくのが良い。その言動の虚実を疑いたくなるほど虚構的な人物が登場したかと思うと、統合失調症になった前夫の話を始める人もいて、縄文ではなく、そこに至るまでの話をもっと聞いていたくなる。このノリで〈映画にハマる人々〉も観たいが、こんな陽気にはならず陰惨なものになるだろう。

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