オラとニコデムの家の映画専門家レビュー一覧

  • ライター

    石村加奈

    飲酒問題を抱える父親と自閉症の弟の面倒に追われ、14歳にしてすっかり生活にくたびれた少女オラに、カメラはぐいぐい寄っていくのだが、家を出た母親と電話する時だけ、少女と距離を置く。その距離感に“この監督は信用できる”と思った。この生活しか知らない少女には、自分が困窮している自覚も、髪の毛を梳かしてくれる愛情に飢えていることに気づく余裕すらない。しんどいエピソードが積み上がる中で、身勝手な母親の話に物わかりよく相づちを打つ少女がいちばん哀しかったから。

  • 映像演出、映画評論

    荻野洋一

    母は愛人を作って別居、父はアルコール依存と問題山積の家庭にカメラがずかずかと居座る。自閉症の弟ニコデムの面倒を必死にみる14歳の姉オラは、ドキュメンタリーの取材対象の域を越え、もはや完璧に映画の主演女優となった。ここまで胸襟を開かせるまでの長い準備期間での関係構築を、ザメツカ監督は強調する。ではカメラの存在を消せたのかというと逆だろう。カメラがそこにあるがゆえに、オラは本来のオラ以上に「オラになる」のだ。それは「やらせ」なんて簡単なものじゃない。

  • 脚本家

    北里宇一郎

    不在の母。無気力な父。自閉症らしい弟。14歳の少女が一家を担っている。キャメラはこの少女と家族に寄り添う。誰も撮影を気にしないのは、作り手との信頼関係が厚いことで。監督たちが深い愛情を注いでいることが分かる。弟に聖体拝領の儀式を受けさせること、母を呼び戻すこと。その少女の願いが叶っても、状況は元のまま。というところに人間、その救いとは何かを問いかけているようで。少し作品世界が狭い印象。が、何があろうとこの姉弟は成長し続けていて。そこが胸に迫る。

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