北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイの映画専門家レビュー一覧
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批評家、映像作家
金子遊
国境を越えてファシズムに合うファッション、音楽、身体パフォーマンスがあるのだろう。解放記念日に平壌に招かれたライバッハのコンサート映像を見ると、軍隊的なマーチの要素や高揚感をおぼえるヴォーカルなどの特徴が興味深い。しかし、映画としては当たり前のツアー・ドキュメントであり、制約の多いなかで何とかコンサートを挙行するメンバーの苦労話に終始している。北朝鮮とスロヴェニアのバンドが21世紀に出会うことに関して、批評的な考察があれば引き締まったかも。
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映画評論家
きさらぎ尚
ライバッハのコンサート場面がほんの少しだったのは、ちょっぴりがっかり。でも初日まで彼らに密着し、メンバーとスタッフ、そして招聘した北朝鮮の関係者とのやり取りは見応えあり。異文化の衝突(監視や統制)は話に聞くのと違い、映像で見るとよりスリリング。熱い両者とは対照的に表情が乏しく、楽しんでいるようには見えない観客は、そもそもどんな人たちだろうか。そこかしこに覗く独裁国家の素顔に音楽ドキュメンタリーを超えて諸々の関心が募る。今日の動静も含めるとなお。
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映画系文筆業
奈々村久生
3年前の式典にまつわる真実がこのタイミングで公開されるのも数奇な巡り合わせと言える。1年前と比べても北朝鮮のイメージは大きく変わりつつあるからだ。過激なスタイルのロックバンドが検閲と闘いながら打開策を探る記録は表現をめぐる運動として極めてスタンダードなものであるが、ナチス的なファシズムをパロディとして装う同バンドを敢えて自国の記念すべき行事に招致した金正恩の胸中やいかに? それを慮れば、もっと奥の深い二重三重のブラック・コメディに見えてくる。
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