二階堂家物語の映画専門家レビュー一覧

二階堂家物語

なら国際映画祭の映画製作プロジェクトNARAtiveとして誕生した3世代の家族の物語。一人息子を亡くし、辰也とその母ハルは代々続く家系が途絶える危機に頭を痛めていた。息子を失い、妻が出て行ってしまった辰也に、ハルは望まぬ相手との結婚を迫る。監督は、2015年カンヌ国際映画祭ある視点部門・期待すべき新人賞を受賞したイランの女性監督アイダ・パナハンデ。エグゼクティブ・プロデューサーは、「Vision」の河瀬直美。出演は、「テラフォーマーズ」の加藤雅也、「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」の石橋静河、「OVER DRIVE オーバードライブ」の町田啓太。
  • 評論家

    上野昻志

    平成31年の春に、旧家の跡取りは男子に限る、なんて映画が登場したのに呆れた。昭和30年頃ならまだ通用したろうが、当時でも、まともな監督なら喜劇にしたはず。それを大真面目にやってる。極めつきはラスト。加藤雅也演じる当主は、惹かれて関係を持った秘書の沙羅(陽月華)が子供を産めないからと彼との結婚を断ると、それまで遠ざけていた美紀(伊勢佳世)を抱くのだ。これじゃ女は子供を産むための道具という話じゃないか。それを女性製作者のもと女性監督が撮ったのに絶句!

  • 映画評論家

    上島春彦

    これは絶品。跡継ぎを失った名家の家長とその母親の悪あがきを、あくまで正攻法、真正面から描く。昨今の風潮だと喜劇っぽくなりそうだがそうじゃない。見どころは多いが、とりわけ経営者一家と先代からの部下一家の関係が懐深くていいですね。愛憎関係と言ってしまうと愛より憎の方が強い感じ。これは愛情の方が中心。根は善人だが酷薄な加藤雅也社長が腹心の部下田中要次を左遷したことから起こるいざこざとか。日本映画らしからぬ繊細さで描かれる再婚候補者二人のてん末も優秀だ。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    クレジットを見なければ外国人監督が撮ったとは気づくまい。イラン映画との親和性を思えば納得するが、ニッポンを誇張するカットもなく、描写力の厚みが突出する。親族と地元の人々が勤める中小のファミリー企業を舞台にしているのが良い。社内の上下関係と、私生活での親子、隣人の二重関係がドラマを膨らませる。ただし、天皇制への目配せとは言わないが、跡取り問題はそれほど格式高い旧家に思えず、大仰に見えてしまう。石橋静河だからと不必要に踊らせるのもイタダケない。

1 - 3件表示/全3件