ナチス第三の男の映画専門家レビュー一覧
ナチス第三の男
ゴンクール賞最優秀新人賞受賞のベストセラー小説『HHhH(プラハ、1942年)』を映画化。ヒトラー、ヒムラーに継ぐ“ナチス第三の男”としてユダヤ人大量虐殺の首謀者となるR・ハイドリヒの半生と、史上唯一成功したナチス高官暗殺計画の真実に迫る。出演は、「ターミネーター 新起動/ジェニシス」のジェイソン・クラーク、「ゴーン・ガール」のロザムンド・パイク、「不屈の男 アンブロークン」のジャック・オコンネル、「シング・ストリート 未来へのうた」のジャック・レイナー、「アリス・イン・ワンダーランド」シリーズのミア・ワシコウスカ。監督は、「フレンチ・コネクション 史上最強の麻薬戦争」のセドリック・ヒメネス。
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批評家、映像作家
金子遊
邦題や宣伝ヴィジュアルからは想像しづらいが、ナチスのナンバー3だったハイドリヒを描く伝記映画ではない。彼の暗殺を計画し、チェコ亡命政府が送りこんだ工作メンバーの暗躍を描いており、後半はナチスに彼らがじりじりと追いつめられる攻防である。アクション大作の風格をもつキレのいいカット割りが魅力で、リアリズムも貫徹されている。監督はスピルバーグあたりの演出を意識しているのか。とはいえ、現代の映画なのにナチスの軍人がドイツ訛りの英語で話すのはどうかと思う。
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映画評論家
きさらぎ尚
主人公ハイドリヒの冷酷非情さは、見るもおぞましい。そのうえ美形のロザムンド・パイクが筋金入りのナチス信奉者を演じると、役柄に凄みが。というわけで、浄化と称してユダヤ人を絶滅することに血道をあげた人物を描いたこの映画の衝撃は強烈だ。ただしそれは前半まで。後半は彼を暗殺するための、チェコ人青年部隊によるエンスラポイド作戦に話が変わる。結果、映画は接ぎ木の様相に。前半・後半はそれぞれが力強いドラマになっているので、独立した別々の作品として見たかった。
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映画系文筆業
奈々村久生
フィンチャーが「ゴーン・ガール」のヒロインにロザムンド・パイクを起用した理由は彼女の不透明性だったという。これはかなり言い得て妙で、同作はパイクの代表作に違いないが、あれだけ強烈なキャラクターを演じた彼女が以降そのイメージにとらわれているかというとそうとも言えない。そんなパイクの得体の知れなさが、熱心なナチ信者かつ貴族である本作の役どころでは遺憾無く発揮されており、ハイドリヒを洗脳した張本人としての不気味な存在感はある意味ハイドリヒより大きい。
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