サタデーナイト・チャーチ 夢を歌う場所の映画専門家レビュー一覧
サタデーナイト・チャーチ 夢を歌う場所
実在するLGBTの支援プログラムを舞台にしたヒューマンドラマ。トランスジェンダーの青年ユリシーズは、同じ境遇の仲間と語らう場として開放された土曜の夜の教会で、少しずつ自分を解放していく。しかし、家族に秘密を知られてしまい、家を追い出される。監督・脚本は、本作がデビュー作となるデイモン・カーダシス。出演は、ブロードウェイの若手俳優ルカ・カイン、ドラマ『Pose/ポーズ』のMJ・ロドリゲス。オースティンゲイ・レズビアン映画祭最優秀長編作品賞、サンフランシスコLGBT国際映画祭新人監督作品賞ほか受賞多数。
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翻訳家
篠儀直子
黒人男性でクリスチャンであると同時に異性装者でゲイであることの苦しさを、該当しない人間(たとえばわたし)が理解できると考えるのはきっと傲慢なことだ。でも、家出中に主人公が経験する孤独と屈辱の描写には、観る者を切実に揺さぶる普遍性がある。残念なのは、ローズおばさんひとりに悪役を背負わせてしまったせいで、主人公の苦しみの原因が大したことなく見えてしまうこと。キメキメに見せるのではない、ちょっとアマチュアっぽいミュージカルシーンに、独特の味わいあり。
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映画監督
内藤誠
ブロンクスに暮らす黒人の少年ユリシーズ(ルカ・カイン)は軍人の父の死をきっかけに女装をするようになる。監督自身、トランスジェンダーで、調査は万全であるとのこと。母の留守中、手伝いにきたオバさんはカインがハイヒールをはいている光景を見て、「黒人でゲイじゃ、将来、仕事にもつけないよ」とののしる。学校仲間にも「オカマ野郎!」とからかわれ、孤立無援。サタデーナイト・チャーチでLGBT仲間が歌い、踊り、語り合う場面が出てくるまで、カインを見ているのが辛い。
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ライター
平田裕介
トラヴォルタのディスコ映画やエルトン・ジョンの名曲のせいもあってか、“サタデー・ナイト”というと弾けたイメージ。ミュージカルでもあるので、そうしたノリかと構えたが極めて真摯な姿勢の作品であった。原題をよく見たら“ナイト”が抜けているので仕方ないとは思ったものの、人種的にも性の面でもマイノリティであることの辛さをガツンと描いてはおらず、主人公が自身を解き放つ場となるヴォーグ・ナイトをクライマックスとしてしっかり据えていなかったりと、なにかと甘い。
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