天気の子の映画専門家レビュー一覧

天気の子

「君の名は。」から3年振りの新海誠監督作となる長編アニメーション。高1の夏、離島から家出して東京にやってきた帆高は、怪しげなオカルト雑誌のライターになる。連日雨が降り続くなか、祈るだけで空を晴れにできる不思議な能力を持つ少女・陽菜と出会う。声の出演は、オーディションで選ばれた舞台『弱虫ペダル』の醍醐虎汰朗、「東京喰種 トーキョーグール【S】」の森七菜が主人公とヒロインを務めるほか、「空母いぶき」の本田翼、「初恋 お父さん、チビがいなくなりました」の倍賞千恵子、「銀魂」シリーズの小栗旬。
  • 評論家

    上野昻志

    世界が、降り続く雨に覆われているという物語の基本構図が、まず良い。そこには、すでに天変地異が日常化した日本列島の明日が見える。しかも豪雨が集中するのが東京、というのも楽しい。そこで、故郷を棄ててきたものの、東京は怖いというイノセントな少年と、親代わりに弟を養う少女が出会う。少女が祈るときに起きる奇跡とそれがもたらす代償。新宿や池袋、田端あたりの風景の、実写では感じられぬ肌触りにアニメの力を感じると同時に、最後の東京の姿に、これで良いのだと納得!

  • 映画評論家

    上島春彦

    キャッチにある「世界の秘密」だが、それを知ることになるのは普通の子供二人。これがいつでも新海的世界像の鍵で、彼らは選ばれ、もてあそばれている。誰に。今回は「天」に。天の「気」とはよくぞ言ったものだ。もっとも二人には、空が作る光の道しるべに反応する能力がある。能力ではエリートみたいか。誰にでも見えるのだが、たまたまそれを別個に見たせいで二人は巡り合ってしまうのだ。上昇する水滴、水泡の主題は宮崎駿を継承するが、新海映画の子供はそれを操るわけじゃない。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    美点と欠点を弁えたプロデューサーの制御が効いた前作と違って新海誠の自由度が広がった結果、現代の天候や代々木の傷天ビルを取り入れるセンスは突出するが、短篇型の作家が戦略なく長篇を作ることで串団子状の構成に。描写の深まる箇所は全てPV的な処理で誤魔化されてしまう。〈女と銃〉の扱いの悪さは活劇の不感症ぶりを露呈させ、警官を突破する描写も工夫なく繰り返される。実写のトレースでしかないので、東京の風景に変化が生じても想像力が加算されないのもつまらない。

1 - 3件表示/全3件