ぼくの好きな先生(2018)の映画専門家レビュー一覧

ぼくの好きな先生(2018)

「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」の前田哲が自らカメラを手に撮影した画家・瀬島匠のドキュメンタリー。大学で学生を指導しつつ、日本中を駆け巡って創作活動をしている瀬島。自由奔放に人生を謳歌しているように見えるが、ある宿命を背負っていた。
  • 評論家

    上野昻志

    確かに、この先生、面白い。やっていることも面白いし、描く絵も、海の波の動きにことのほか惹かれているのだろうか、それを反復するようにも見える描き方も自由で、見ているだけで楽しくなる。ところどころで学生に語りかけているが、あれなら、学生も伸び伸びと制作に向かえるだろう。そういう先生に興味を持って、カメラを向けるに到ったという前田哲監督の気持もよくわかるし、だからか、彼が先生に向かって問いかける言葉にも、絶妙な距離感があって、世界は狭くとも映画を弾ませる。

  • 映画評論家

    上島春彦

    絵を売って生計を立てているわけじゃなく、絵の先生、と自ら称する瀬島匠。実際、教えるのが上手な人だ、というのは見れば分かる。生徒をその気にさせちゃう。でも彼はやっぱり画家。発するオーラがケタ違いである。動かなきゃいられないのだ。彼が絵に、それもドーンと真ん中に描き込む文字が、この映画における「バラのつぼみ」と言える。またかよ、と言われます。とニコニコしているが、その謎が終盤に活きてくる。走り続けるのが鎮魂であるという印象を監督がうまく引き出した。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    ちょっと失礼に思えるほどツッコミを入れていく前田哲と、天然ボケを炸裂させる瀬島匠のコンビが良い味を出している。2人の関係性が出来上がった上でカメラが回り始めるので、ハチャメチャな個性を妙に持ち上げることもない。意外に先生としてはマトモ(失礼!)なところも嫌味なく映し出され、こんな先生に教わりたいと思わせてくれる。後半のウエットな展開も重くなりすぎない。ただ、作品を見せる上では監督が撮影も兼ねるのではなく、カメラマンが必要だったのではないか。

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