転がるビー玉の映画専門家レビュー一覧
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映画評論家
川口敦子
渋谷が変わる――と、これは歩道橋の架け替え、井の頭線から遠くなった銀座線、新しいPARCOと、皮相的部分だけでも日々、実感しているけれど、この絶好のタイミングを映画に活かし切れていないのがもどかしい。変わる渋谷をまざまざと描いてこそ変われない青春が鮮烈に迫ってきたのではないか。それがないから3人の女の子の泣き笑いの日々は、青春映画の陳腐なパターン、花火、すいか割り、転がるビー玉と形骸化した夢の欠片の感傷に呑み込まれ、澱んでいる。
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編集者、ライター
佐野亨
この作品にかぎったことではないが、近年の少なからぬ日本映画では、役者の身体性を信頼せず、物語のカタにはめ込もうとする傾向が目立つように思う。この映画では、再開発によって変わりゆく渋谷という街と人物、およびそのなかにあるやがて壊されゆく部屋と人物との関係そのものが物語を転がしていくのだが、用意された空間のなかに人物を配置して動かしている、という以上の身体性が浮上してこない。役者陣(とくに萩原みのり)はよい表情をしているだけに残念だ。
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詩人、映画監督
福間健二
渋谷の試写室で見て、渋谷をよく撮っていると感心した。スタイリッシュ+なにかあるという期待どおりに、取り壊しを待つマンションで共同生活する三人の若い女性を見つめ、追いつめるところは追いつめる。宇賀那監督、「描く」だけでなく「言う」がもっと欲しい気もするが、ビー玉の出し方と逆ロードムービーの発想は買える。大昔の三人娘映画から明らかに進んでいるものがある。でも、まだヌーヴェルヴァーグに追いついてないという感じ。宣伝、「ささやかな」を強調しすぎかな。
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