99歳 母と暮らせばの映画専門家レビュー一覧

99歳 母と暮らせば

    99歳の母を支える家族の姿を約1年にわたり記録したドキュメンタリー。認知症や足腰の衰えを訴える一人暮らしの母を介護し見守るため、71歳の息子が仕事の場を母の住む実家に移し、母の人生最終章を気持ちよく楽しく過ごしてもらうための方法を模索する。監督は、「華 いのち 中川幸夫」の谷光章。
    • 評論家

      上野昻志

      とにかく、この99歳の母、千江子さんが凄い。ハーモニカも上手なら歌もうまい。耳もよく聞こえるし、何よりも食欲が旺盛。そのうえ、シャツのボタン付けのような針仕事もちゃんとできる。唯一の悩みは、腰が痛むことで、その度に息子にマッサージをしてもらうが、この歳で、それぐらいしか支障がないこと自体が驚きだ。若いときはボウリングもやり、テキスタイル画なども作ったというから、心身共に豊かに生きてきた人だと思う。だから介護といっても、これはほんの入り口の風景。

    • 映画評論家

      上島春彦

      記録映画作家が描く母親の老々介護日記。介護といっても、もうすぐ百歳になる彼女は何と普通に歩く。下の粗相はあるにしてもこの齢なら身体の方は健康体。貯金通帳を家族に奪われたというのは多分被害妄想なのだが、その辺の説明がないのは不満かも。それにしても、耳は遠いが頭ははっきりしていて自分の幻視状況を詳細に息子に報告するのが貴重な症例になっている。意外と星が伸びないのは、もっと息子さんや医療スタッフのことを知りたいと思ってしまうせいだ。惜しいけど良作。

    • 映画評論家

      吉田伊知郎

      親族側からすれば、感じの悪い映画かもしれない。高齢の母への威圧的な発言があったとか、名を挙げて金を持ち去られたと母が言うのをそのまま映しているのだから(事実無根とテロップは出るが)。 それだけ二男である作者の優しさと母への愛情が滲んだ作品になっており、声を荒げそうになる出来事が起きても、柔らかく母を包みこんで穏やかな生活を送らせようとする姿が印象深い。戦前に建てられた家に住む母が、不意に見えない人たちと会話を始める場面も寓話的な魅力がある。

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