ディリリとパリの時間旅行の映画専門家レビュー一覧

ディリリとパリの時間旅行

「キリクと魔女」のミッシェル・オスロ監督による長編アニメ。パリが華やいだ19世紀末~20世紀初頭のベル・エポックの時代。ニューカレドニアからやってきたディリリはパリで出会ったオレルとともに、天才たちの協力を受けながら誘拐事件に立ち向かっていく。音楽を「イングリッシュ・ペイシェント」でオスカーを獲得したガブリエル・ヤレドが手がけ、ソプラノ歌手ナタリー・デセイが実在したオペラ歌手エマ・カルヴェの声を担当。日本語吹替版では、「3月のライオン」の新津ちせ、「麻雀放浪記2020」の斎藤工らが参加した。第44回セザール賞にて最優秀アニメ作品賞を受賞。劇場公開に先駆けフランス映画祭2019にて上映、エールフランス観客賞に輝く。
  • アメリカ文学者、映画評論

    畑中佳樹

    ベル・エポックのパリの背景が美しく、そこへロートレック、コレット、モネ、サティ、ドビュッシー、パスツール、マリ・キュリー等キラ星のような著名人が(似顔絵で)登場する。男性の場合はヒゲが、女性の場合は衣装と姿勢がポイントか。物語はニューカレドニアからやって来た少女ディリリが配達人のオレルと、男性支配団による少女連続誘拐事件を解決するまで。ディリリがいつのまにかチータの背に乗ってノソリノソリしている辺りのリズムが、実にいい感じだ。

  • ライター

    石村加奈

    タイトルをはじめ「ペイネ 愛の世界旅行」(74)との共通点は多々あれど、全く違う現代的なテーマ、即ち男権主義者に抵抗し、立ち上がる女性の、凛々しい姿を描いた、繊細な美しさのアニメーションだ。少女ディリリ(チーターとのシーンが素敵)を取り巻く、化学者マリ・キュリー、舞台女優サラ・ベルナール、オペラ歌手エマ・カルヴェら、ベル・エポック時代を彩った女性たちのエレガントな態度には、うっとり、というより背筋が伸びる。ガブリエル・ヤレドの音楽も素晴らしく、耳福。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    万博の人間動物園「カナック村」にバイトで出演する少女ディリリと配達人の青年オレルが出会う冒頭の流れが見事だ。え、何が始まったの?と思っている間にベル・エポックのパリで繰り広げられる“一見かわいい”冒険ミステリーに引き込まれている。写実的だが奥行きを感じさせない背景、立体的な造形物、ややデフォルメされた人物たちが一体となった不思議な味わいのアニメーションだが、その中に現代にも通じる人種やジェンダーの問題をさらりと描いている、実は骨太な作品だった。

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