風の電話の映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
主人公のハルは、(もしかしたら死ぬために向かった)故郷への旅の途中で、自分が家族を失った東日本大震災とは違う悲劇で故郷を奪われた人々と出会い、経験を分かち合い、自己の悲劇を相対化する。終着地点となる風の電話で、ハルが茫漠とした感情を初めて言語化するシーンは、演じるモトーラ世理奈がこの撮影で経験したものが吐き出されているように見えた。このドキュメンタルなフィクションは、311後の人間を描いた映画として、現時点での決定版だ。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
豪華な俳優陣の結集にまずは驚く。監督やプロデューサーが斯界で信頼されている証しだろう。「風の電話」の存在を初めて知った。それを映画の題材に取り上げたことは称賛に値する。だから、余計にもったいない。脚本において、良くない構成の一つと言われるものに「団子の串刺し」がある。複数のエピソードを行き当たりばったりに連ねるもの。本作は正直かなり団子くさい。ドラマチックな構成に作為を感じて、あえてこうしたんだろうか。せっかくの脚本術を使わないのは、もったいない。
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映画評論家
吉田広明
東日本大震災で父母弟を失った少女のロードムーヴィー。生き残ったこと自体の罪悪感に苛まれる辛さを、自分が思い出してあげなければ誰も家族のことを覚えている人がいないのだからと旅での出会いを通して克服してゆくわけだが、予定調和に見える。せめてその葛藤を一気に語る最後の電話場面が上手くいっていれば。ここは確かに難しいが、映画の肝でもあり、俳優任せでなくしっかり演出すべきだった。全体に即興芝居が俳優の生身の不確定性を生かしきれず、想定内でしかない。
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