風をつかまえた少年の映画専門家レビュー一覧
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批評家、映像作家
金子遊
今年西アフリカへ旅してから、アフリカ映画が気になって仕方がない。舞台はアフリカ南部の内陸国マラウイ。農村部における不作、飢餓、政治の問題や、主人公の少年の家庭における貧困や学問の問題を掘り下げる物語。冒頭から登場するボロ布をまとった精霊信仰の神々も気になるし、族長を囲んだ大人たちの集会、必ず混乱に終わる政治集会など、見聞したアフリカと同じで頷いてしまう。数年以内に、アフリカ大陸から新しい映画の才能が現れ、私たちを驚かせるだろうと予言しておく。
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映画評論家
きさらぎ尚
発明の陰に感動的なエピソードはつきものだが、学者でも研究者でもないこの映画の主人公の、村を救った奇跡の実話は、少年の切実な願いがすべて。雨期と大干ばつが農作物を襲い収入が途絶え、日々の食糧にも事欠くとなれば、子どもたちは学校に行く場合ではなくなる。ここまでは予想の範囲内。素晴らしいのはここから先。本から独力で、風力発電機で畑に水を引くことを学び実現したのだから。現地マラウイでの撮影が効果絶大。感動と共に、教育の大切さを胸に刻まなければ。
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映画系文筆業
奈々村久生
風車と映画は相性がいい。とにかく絵になる。しかも社会的にフックのある実話ベースで、ドキュメンタリーのラインナップも充実しているネットフリックス作品ならではのフラグは何本も立っている。廃材を組み合わせた装置はDIY感あふれる見てくれだが、学校にも通えない中、独学で風力発電を完成させたウィリアムはいわば天才少年だ。ただ、親子ドラマに焦点が当たっているせいかそのすごさが伝わりづらい。エピソードの特異性がオーソドックスなドラマに吸収されてしまった形だ。
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