北の果ての小さな村での映画専門家レビュー一覧

北の果ての小さな村で

ドキュメンタリー的手法で北極圏の自然とともに生きる人々の暮らしを映し出すドラマ。グリーンランド東部の小さな村の小学校にデンマークから赴任した新人教師アンダース。異なる文化に苦戦するなか、生徒の祖父母からこの地で生きるための哲学を教えられる。2018年サンダンス映画祭ワールドシネマ部門正式出品作品。
  • 批評家、映像作家

    金子遊

    ★★★★★★星6つ。今年の洋画第1位で決定。人類発祥後、モンゴロイドはシベリア、アラスカ、パタゴニアへ、スカンジナビア、グリーンランド、北極圏まで偉大な移動の旅を続けた。トナカイ遊牧はグローバルに広がり、樺太のウィルタにもそれがあった。語学教師がグリーンランドのイヌイットにデンマーク語を教えにいくコロニアルな題材とはいえ、先住民の姿を劇映画に描いたことは画期的。しかも彼らに自分自身を演じてもらう「ナヌーク」のエスノフィクションの手法。最高!

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    日本からは遠いグリーンランドではあるが、53年までデンマークの植民地であり、現在は自治政府が置かれていることを知れば、このドキュフィクションの見え方が違ってくる。主人公は旧宗主国からデンマーク語を教えるために来た教師なのだから。「現地の言葉を覚える必要はない」と言う引き継ぎをする前任者の言葉、主人公のナイーブすぎるまでの現地の人々の文化・伝統・暮らしへの溶け込み方に、同化政策に対する疑問がちらり。現地と外来の人間の、両者の眼差しが全篇に注がれている。

  • 映画系文筆業

    奈々村久生

    グリーンランドの村人たちの顔がとにかくいい。顔が彼らの生きてきた土地の力を雄弁に物語る。中でもまだ年齢の浅いイヌイットの少年アサーの顔は、その血を確かに受け継ぎながら、何者にもなれる未来を宿している。時に動物のように無邪気なアサーと赴任教師アンダースとの交流には神聖ささえ感じる。どこまでも続く白銀、雪原を走る犬ぞり、雪に囲まれ流氷の浮かぶ氷河を進むボート。圧倒的なロケーションが言葉を凌駕する。雪の中に不意に現れた白熊の親子は息を飲むほど美しい。

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