みぽりんの映画専門家レビュー一覧

みぽりん

カナザワ映画祭2019で期待の新人監督 観客賞を受賞したホラー。声優地下アイドルユニット“Oh!それミーオ!”の神田優花は、音痴を治そうとボイストレーナー・みほの合宿に参加するが、六甲山の山荘に監禁されてしまう。やがて、みほの異常性が表面化し……。監督・脚本は、本作が長編デビューとなる松本大樹。
  • フリーライター

    須永貴子

    アイドルになる夢に破れた30代ボイストレーナーが、「セッション」の鬼教官を超える狂気で、現役地下アイドルを追い詰める。ライトな密室サバイバルホラーという皮をめくると見えてくる、「アイドルはどうあるべきか」というテーマを巡る、新旧の価値観のぶつかり合いに興味を惹かれる。「怪しんでいる人から出されたコーヒーをなぜ飲む?」「5日前に屋外に置き忘れた手袋が同じ場所にあるのは不自然では?」など、ご都合主義のツッコミどころが目立つが、次作への期待が軽く勝る。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    また楽しみな人が出てきた。メジャー系の売れ筋な人たちの映画に軒並み失望を強いられていた今日この頃、嬉しくて涙が出そうにさえなる。音痴な地下アイドルが怪しげなボイストレーナーに軟禁されるという「ミザリー」的な設定からしてそそられる。“新感覚パニック・ホラー”と言うが、そんなジャンル的な分類を笑い飛ばしているかのよう。爆笑ではなく、ブラックなくすくす笑いのあれこれに、何故だか心が癒される。僕は好きです。こんな映画を心ひそかに待っていた気がする。

  • 映画評論家

    吉田広明

    ホラーというのは安い作りでもアイディアと演出で十分面白いものが作れるので自主作品の枠組みとしてはいいと思う。日常の描写の中に紛れ込む微妙な違和、それが徐々に積み重ねられてゆくと、日常と思っていたものの根底が崩れだす。小さな亀裂が世界をひっくり返す。このダイナミズムがホラーの醍醐味だろう。しかしそれにはアイディアの卓越か観客の意識を操作する演出の腕が要る。その困難に正面から向き合うのでなくコメディに逃げた印象。といってもコメディはもっと難しいが。

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