ダンサー そして私たちは踊ったの映画専門家レビュー一覧

ダンサー そして私たちは踊った

スウェーデンの新鋭レヴァン・アキンが手掛けた人間ドラマ。ジョージア国立舞踊団。幼少期からダンスパートナーのマリとトレーニングを積んできたメラブは、新星イラクリの登場によってライバル心を芽生えさせる。その思いはやがて欲望へと変わり……。第92回米国アカデミー賞国際長編映画賞部門スウェーデン代表となった作品。「のむコレ3」にて上映。2020年2月21日より単独劇場公開。
  • 映画評論家

    小野寺系

    奇しくも「ソン・ランの響き」に近い設定の作品だが、こちらは芸の道に中指を突き立てるパンクさが気持ちいい。と同時に、むしろその姿勢が50年前に衰退したという本来の伝統と共鳴する瞬間が感動的! マッチョ志向や不寛容な精神を、伝統の美名のもとに珍重し、少数者を踏み潰そうとする現代の風潮への批判も的を射ている。コンテンポラリーダンサーのレヴァン・ゲルバヒアニの華奢な身体と激しいダンスとの危うい均衡が、映画全体に美と説得力を与えている。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    ダンスが題材のこのラブストーリーが伝える事柄の多さに感心すると共に、それらの表現の巧みさに感嘆。マチズモとセクシュアリティの他に家族、人々の生活、文化等々、画面に映るジョージアは、興味が段々に積み重なる手堅い構成になっているのが注目すべきポイント。ローカルな場所にいるマイノリティの主人公をとおして問いかけてくるグローバルな世界のマジョリティな人々とは。その答えを、ラストの圧巻のダンスシーンで出すのはお決まりの着地だが、ともかく見どころが多い。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    人物の心情に寄り添いながらシーケンスごとに手法をずらしてくる不均質な演出とカメラワークには惚れ惚れさせられたし、「セッション」ジョージア舞踊版的なスパルタ教師との対決、同性愛差別、生々しい性愛描写、切ないラブストーリー、それら複数の要素を分離させることなく盛り込み、最後に肉体の躍動をもってまとめんとする試みの脚本もシンプルながらクレバーだと思うが、巧さゆえに抑えが利きすぎて物足りなく感じる部分もあり、この辺の匙加減は映画の難しいところだと思う。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事