オーバー・ザ・リミット 新体操の女王マムーンの軌跡の映画専門家レビュー一覧

オーバー・ザ・リミット 新体操の女王マムーンの軌跡

    ロシアの新体操選手マルガリータ・マムーンが、2016年リオ五輪で金メダルを手にするまでの軌跡を追ったドキュメンタリー。数多くの金メダリストを育て上げたイリーナ・ヴィネルの指導を受け、“リタ”ことマムーンは、過酷なトレーニングを積んでいく。ポーランド出身のドキュメンタリー作家マルタ・プルスが、粘り強い交渉の末、秘密のベールに包まれていたロシア新体操のトレーニングの様子をカメラに収めた。
    • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

      ヴィヴィアン佐藤

      監督はポーランドのアンジェイ・ワイダ映画学校出身の22歳。少女コミックから出てきたような強烈ヘッドコーチに罵声を浴びせられるリタ。政治とプロパガンダの関係が濃密で、ロシアの選手たちは謎に包まれている。アスリートの強さは国家の強さ。昔ヴェネチア・ビエンナーレで米アーティストの作品が、国家の威信をかけてミッドウェー空母で搬入された。優れたアーティストの創出は国家の軍事力だと知らされた衝撃。燦爛ではなく人間の影や深みに惹かれる若い監督の着眼点に期待。

    • フリーライター

      藤木TDC

      最終盤に彼氏との濃厚ラブラブカットが用いられ、そうした場面は日本製スポーツドキュメンタリー、こと五輪選手の場合には使用例があまりないので新鮮。だが、それ以外のほとんどのシーンは練習中にコーチにどやされ不機嫌な表情のマムーンを延々映しているだけで物足りない。ロシア側の撮影非公開が多かったのかもしれないものの、監督が構想した作品に完成しているのだろうか?スポーツ記録映画は人気の安定したジャンルでも、新しい切り口やスタイルの提示は案外難しい。

    • 映画評論家

      真魚八重子

      思いがけずキリキリと神経がやられる良質ドキュメンタリー。新体操の選手マムーンの軌跡というより、コーチと選手の間でモラハラ、パワハラの負の連鎖が続く実態を捉えてしまった作品だ。人間性を破壊する指導を許してまでも、オリンピックに価値はあるのかという問いかけに、マムーンが出した後味の悪い答えに愕然とさせられる。監督は最初からこのテーマを狙い、ロシア新体操の撮影をしようとしたのだろうか? 練習風景に写り込んだ加虐性に着眼してつないだのか、気になる。

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