ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方の映画専門家レビュー一覧

ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方

    映画制作やTV番組の監督・カメラマンを務めてきたジョン・チェスターが、妻と共に始めたオーガニック農場作りを撮ったドキュメンタリー。自然の厳しさに翻弄されながらも、荒れ果てた農地を自然と共生する農場にするべく挑んだ、夫妻の8年間の奮闘を収める。AFI映画祭2018観客賞はじめ数々の映画祭で受賞。東京都推奨映画。文部科学省特別選定一般非劇映画(少年、青年、成人、家庭向き)。
    • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

      ヴィヴィアン佐藤

      害虫も害獣も駆除しないし、農薬も使わない。生物の多様性を最大限まで高める。これはもはや農業というより、地球と生物の関係性の哲学。当初は生態系の再現やモデルを目指していたが、このファーム自体が地球や宇宙そのもの。そのときスケールという概念はなくなり、人間の体内もまた大きな宇宙であるということが分かってくる。元々アニマルプラネットなどの映像製作者である本人が作っているので、映像や構成が上手すぎたというのが唯一不自然なところだったかもしれない。

    • フリーライター

      藤木TDC

      荒地を伝統農法で楽園的なエコロジーファームに変える試みを8年にわたり撮影。家畜や野生動物が躍動し動物好きにはたまらない映像詩だろう。ただ巨額の先行投資をして疑似自然を人工的に作るのだから手段が伝統農法でも歪みは出る。失敗の連続を隠さず描く姿勢は真摯だが、不安定な収入のもとで働く人々の生計の原資が謎のままなのが引っかかるし、予定調和のハッピーエンドへ向かう終盤はあざとさが拭えない。美しすぎる映像からは作り手の主張に反し商業主義的な訝しさが漂う。

    • 映画評論家

      真魚八重子

      かなりの時間経過を含んでいるはずのドキュメンタリーで、樹木園の拡大など一目瞭然の変化もあるのだが、いまいち体感としてその長き年月が伝わってこない構成と編集になっている。動物の病や出産などの劇的な出来事をいくつか捉えつつも、決定的な瞬間は登場せず、節目が掴めないもどかしさがある。美しい楽園を捉えようとした主観が感じられ、そこから逸脱する些末は刈り取られたりしていないか気になるし、またこの場所で働く若者の労働状態なども勘繰ってしまった。

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