それはまるで人間のようにの映画専門家レビュー一覧
それはまるで人間のように
短編『東京少女』がPFFで映画ファン賞を受賞した橋本根大監督による長編デビュー作。指一つで創造と破壊ができる能力を持つ鈴木と共に暮らすハナは、その力に頼り仕事をしない鈴木に窮屈さを感じていた。そんななか、ハナと口論の末、鈴木は働き始めるが……。出演は『モノにする彼女』の志々目知穂、「赤色彗星倶楽部」の櫻井保幸。
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映画評論家
川口敦子
「ブレードランナー」の創造者に対するレプリカントの造反、愛憎を思いっきりリアルな日常生活の中で描いたら――とかいつまんでしまったのでは身も蓋もないだろうが、半径数メートル的身近な暮らしのまざまざとした感触の紡ぎ方、演じ方、それを究める程にひっそりとそこに埋め込まれた違和の肌触りが冴えてくる。そんな世界を怜悧に差し出しみつめる手際にそつはないがそれ以上に迫りくるものもない。橋本監督の独特の世界、特集上映でまとめて見るとまた違って見えてくるかも。
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編集者、ライター
佐野亨
ぼんやりとした表情、鈍麻する身体、その一挙手一投足に現代的な孤独を映し出そうとする視線にまず好感をもった。どんな力も独りよがりでは「人間のような」ものにしかなりえず、他者との共生のなかで受け入れられ、また相手を受け入れることで初めて生き始める「人間なるもの」の優しさ、美しさ。不器用を茶化さず、戯画化されたキャラクターではなく息をする人間にじっくり寄り添う温かな演出に心から拍手を送りたくなり、橋本根大監督の名前を頭に刻み込んだ。
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詩人、映画監督
福間健二
超現実のなかの現実、非日常のなかの日常。普通じゃなくしたいのだろうが、そのおもしろさは出そこなって、ただ道具立てが希薄という感じ。でも、とにかくカップルで存在する鈴木とハナ。二人だけの納得で生きてきたところから転じて外に出る。クセある他者との時間。彼は清掃の仕事に就いて同僚たちに心理を揺さぶられ、彼女は公園で会った誘惑者にスキを狙われる。橋本監督、簡単そうに撮りながら、いまの、さびしい時代という側面と人を疲れさせるトゲの要素をつかまえている。
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