プラド美術館 驚異のコレクションの映画専門家レビュー一覧

プラド美術館 驚異のコレクション

2019年に開館200周年を迎えたスペイン・プラド美術館の全貌に迫るドキュメンタリー。王国歴代の王族が圧倒的な経済力と美への情熱を背景に収集した至宝の数々や、収蔵品を保存・修復・研究するスタッフの作業風景などを紹介、美の殿堂の歴史と未来を映し出す。ナビゲーターを「運命の逆転」「ある天文学者の恋文」のジェレミー・アイアンズが担当。監督は、本作が長編デビューとなるヴァレリア・パリシ。
  • 映画評論家

    小野寺系

    今回が初めての長篇映画だという監督は、テレビ業界で働いていたらしく、本作は演出や構成含め、教育的なテレビ番組をそのまま映画として提出したようなものになっている。それ自体は否定することではないものの、飽きさせないよう次々に短い場面が移り変わるテレビ演出は、暗闇でスクリーンを見つめる観客にとって過剰なショーアップだと感じられる。情報量は多いためスペイン美術に興味を持つ入口になるかもしれないが、美術史にとってとくに新しい知見があるわけではない。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    美しい風景描写とジェレミー・アイアンズの口跡の整った語りに導かれて館内へ入れば、スペインの歴史がぎっしり。ナビゲーターが実力俳優であることと相まって、さながら重厚な「語り芝居」のような、ドラマ性に彩られている。カメラワークも、例えば展示作品を適切な画角で定点から撮るのではなく、動きのある近接撮影で細部までを捉える。これがドラマ性に寄与。せっかく素晴らしい画を撮っているので、作品に日本語字幕が被るのがもったいない。重箱の隅をつつくようですが。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    もともとは王族が自分たちの趣味、あるいは権力やセンスの良さを誇示するため金にあかせてコレクションした絵画であるがゆえにナショナリズムが介在しない多様性が生まれ、それらが長い年月を経て万人のものになった、というプラド美術館の皮肉めいた歴史を数々のバロック絵画と共に語ってゆくこの映画、吹き替え版で観たことも相まってNHKスペシャルのような雰囲気であり、カタログ的な観やすさと引き換えに映画としての色気を失っている印象も受けるが、大変勉強になる内容だ。

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