15年後のラブソングの映画専門家レビュー一覧

15年後のラブソング

人気作家ニック・ホーンビィの小説を原作にしたロマンティック・コメディ。惰性の日々を過ごすイギリス人女性アニーの下にある日、一通のメールが舞い込む。その差出人は、腐れ縁の恋人ダンカンが心酔する伝説のロックシンガー、タッカー・クロウだった。出演は「ピーターラビット」のローズ・バーン、「真実」のイーサン・ホーク、「モリーズ・ゲーム」のクリス・オダウド。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    ポップカルチャーやスポーツ観戦に入れ込みすぎて私生活に支障をきたす大人。過去に縛られて人生の足踏みをしている大人。そんな大人に気づきを与える子ども。90年代からニック・ホーンビィ小説が延々と書いてきた主題が本作でも繰り返されているわけだが、いくらなんでも自己模倣が過ぎるのではないか。途中から登場するイーサン・ホークの存在感によって作品のテンションは保たれるが、それもリンクレイター作品で彼が演じてきたキャラクターの借り物感が強い。

  • ライター

    石村加奈

    “安定したカーディガン姿の英国女性”風のヒロイン・アニーが、似合わない花柄ワンピで、最低の行為に暴走したところから、ラストシーンの、髪をアップに、自信に満ちた、都会のモノトーン美人に大変身する様を、R・バーンが鮮やかに魅せる(衣裳はL・プー)。腐れ縁の恋人を遂に家から追い出した後、妹と出かけたバーでアニーが踊りだす、物語の転調場面など、音楽とシーンのマッチングが素敵だと思えば、監督がレモンヘッズのベーシスト、J・ペレッツとは、これまた嬉しい再会。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    90年代初頭の数年間だけ活躍し、突如姿を消したオルタナロック・シンガーをE・ホークが演じる、というだけで堪らない。その男タッカー・クロウ(名前も良い)の過去は、当時の文化にどっぷりだった人間は体感を伴って想像できるだろう。15年間同棲するヒロインと彼氏(タッカーの熱狂的マニアである彼の痛さに苦笑)の終焉なき青春への焦燥感が突き刺さる。郷愁ではなく、現在、そしてこの先への希望を綴った普遍的な「大人になれない大人たち」の物語。

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