香港画の映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
ドキュメンタリー映画には、主題に対しすでにある程度の知識を持つ人に向けたもの(A)と、一人でも多くの関心をそのテーマに向けさせるために作られたもの(B)とがある。旅情を誘う実景映像、デモに参加する若者たちの切実な言葉、警察が市民に過剰な暴力を振るう凄惨な場面から成るミニマムで強烈な映像ジャーナリズムである本作はBタイプ。劇場でAを求める人には食い足りないし、一人でも多くの人の目に触れて欲しいので、一刻も早くサブスクで配信されますように。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
「光復香港、時代革命」を旗印にした香港のデモの参加者は2019年6月には103万人に達したという。香港の人口が750万と言われているので、どれだけ多くの人々が、特に若者たちがデモに参加したのか想像を絶する。決死の覚悟で監督が写し撮った若者たちを見ると胸が熱くなってくる。涙が出てくる。警官たちに殴られ蹴られ殺される彼らは歌を合唱する。〈アメリカ国家〉そして〈イマジン〉。人間にとって自由というのは、人間の存在意義そのものなのだとしみじみ思い知らされる。
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映画評論家
吉田広明
ヴェンダースの「東京画」は、異邦人の見た東京として、見たこともない東京を見せてくれたが、この「香港画」は、私たちがTVのニュースで見るものと大差ない映像の集積に過ぎない。確かに香港警察の暴力は酷いものだが、その暴力の依って立つ根拠=国家の暴力性(中国に限らず)まで踏み込んではいない。その本当の怖さが見えず、だからこそ戦わねば、と意志を奮い立たせることもない。プロパガンダとして中途半端、ましてドキュメンタリーの多層性は望むべくもない。
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