カリプソ・ローズの映画専門家レビュー一覧
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非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト
ヴィヴィアン佐藤
自分の曲に新しい命を吹き込む。自身の過去の楽曲のレコーディング風景から始まる本作は、他人の土地で他人の言葉を使って歌うことに疑問を呈するカリプソの女王の誕生秘話、そして先祖、アフリカ・ベナンまで遡行していく旅の物語である。日常の出来事や政治など、いま起きていることを歌という形で口頭伝承するカリプソ。そのリズムやシンコペーションは個人の感覚を超えた、身体に無意識に備わった先祖が経験してきた哀しさである。類共通の民族の移動と伝承を考えざるを得ない。
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フリーライター
藤木TDC
楽しい音楽ドキュメント。海と夏の日差し、そしてスカやソカやレゲエなど自然に体が揺れるカリブ音楽にのせ語られるカリプソ・ゴッドマザー一代記。パリ、NY、そしてベナンの奴隷港までたどり着く公演とルーツ探しの旅は70歳超とは思えないバイタリティ。ライブシーンもノリノリで映像中の聴衆のように映画館の観客も冷たいビールやカクテルを飲みながら見られれば良いのだが。「スティールパンの惑星」に次いで配給のトリニダード・トバゴ映画。この国の映画はもっと見たい。
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映画評論家
真魚八重子
話題が散漫に登場し、まとまりに欠ける作品だ。性差別や性的虐待などの大きな問題や、アフロカリビアンが根本に抱えた人種差別の物語といった、テーマ性はそれぞれに重要なのに、映画は粘らず次から次へと話が移っていってしまう。大御所女性歌手を取り上げた作品では、「マ・レイニーのブラックボトム」のようなフィクションの方が、テーマの焦点を絞り自由に語れるようだ。本人登場によって気を使い、切り込みができなくなり撮れた素材だけをつないだのではと勘繰りたくなる。
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