ヒロシマへの誓い サーロー節子とともにの映画専門家レビュー一覧
ヒロシマへの誓い サーロー節子とともに
核廃絶を訴え続け、ノーベル平和賞を受賞した日本人女性・サーロー節子の平和活動を追ったドキュメンタリー。13歳のとき広島で被爆した彼女は、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)を代表して、国連や国政会議で被爆者としての体験を語り伝えている。監督は、アメリカのネットワーク・テレビでプロデューサーや監督を長年務めてきたスーザン・ストリックラー。
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非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト
ヴィヴィアン佐藤
サーロー節子を追ったドキュメンタリーであると同時に、監督自身の自己言及的な旅でもある。ドキュメンタリー作品とは監督がテーマを自分事として引き寄せ昇華し、セルフポートレイトにあらねばならない。本作はその構造が秀逸。節子は大いに語る。それは「ヒロシマ・モナムール」や「ショアー」が行き着く「表象不可能性」とは正反対の着地点だ。同情を求めたり、自分の悲劇を語りたいのではなく、人々に行動してもらいたい、と。それは着地点ではなく、通過点であり、触媒の役目だ。
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フリーライター
藤木TDC
エンドロールに日本財団系列の米日財団(笹川良一創設)のロゴがあり、助成を受けているようだ。製作者のひとりでサーロー節子の協力者として出演する竹内道の亡き祖父・竹内釼(元近衛師団軍医・広島赤十字病院初代院長)が昭和天皇に謁見する絵画をわざわざ探し出す場面はその影響かと勘ぐらせる。サーローの活動歴やファミリーヒストリーとしてはソツないが、現在日本政府がとる立場や核兵器保有国の政治理念は本作からは知りえない。昨年8月6日、いちどWOWOWで放送済み。
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映画評論家
真魚八重子
生まれ持った資質なのか、若い頃から恐れることなく世界を駆け回る生き方に、ひたすら尊敬の念を覚える。「おしえて!ドクター・ルース」もそうだったが、少女期に悲惨な戦争体験をし、そのあと異国で老いも関係なく大活躍する女性のバイタリティは、畏怖に近い凄みを感じる。被爆の語り部としての節子は、柔らかい言葉に臨場感と、若い女性が経験した生々しい視点があって言葉が記憶に残る。映画としては作風に衒いがないので、映画館より高校の視聴覚教室が向いている気もする。
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