最後にして最初の人類の映画専門家レビュー一覧

最後にして最初の人類

第72回ゴールデングローブ賞作曲賞に輝いた「博士と彼女のセオリー」など幅広いジャンルの作品に楽曲を提供してきた北欧の作曲家ヨハン・ヨハンソンがオラフ・ステープルドンのSF小説を映画化。映像と音楽を組み合わせながら、20億年先の未来から語りかける。マルチメディア作品として2017年にマンチェスター・インターナショナル・フェスティバルで初めてライブパフォーマンスされたのを皮切りに、各地で公演されている。本作は全編16mmフィルムで撮影。ナレーションはオスカー俳優ティルダ・スウィントン。2018年ヨハン・ヨハンソンの急逝を受け、50%ほど完成していた音楽は、ヤイール・エラザール・グロットマンに引き継がれた。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    様々なサントラでも名を馳せていた故ヨハンソン。1930年の原作はSF小説として少しも古くはなく、むしろSF小説界自体の将来を照らす予言の書ともいうべきものだ。20億年先の人類の物語を朗読するティルダ・スウィントンは秀逸。旧ユーゴスラビアに実在する戦争記念碑のデザインの美しさ。音楽家で建築家であったクセナキスというアーティストがいたが、ヨハンソンも建築設計したらこのような建造物を作っていたかもしれない。ミニマルでソリッド。擦り減りにくい作品だ。

  • フリーライター

    藤木TDC

    原案小説と無関係ではないが関連性は希薄、映画というより映像と朗読つきの音楽作品と考えるべき。私は現代音楽が好きなので贔屓目になるが、サウンドと画面の呼応に72分間魅了され続けた。旧ユーゴの戦争記念碑というオブジェは宇宙からの啓示を感じさせ、当監督が音楽を担当した「メッセージ」(16)に似た感触がある。商業地のシネコンだと観賞後の陶酔感を損ないそうで、可能なら巨大スクリーンのある郊外の美術館で観たい。字幕がとても邪魔、吹き替えのほうが良かった。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    こういった傾向のアート映画に寛容なのはやめようと思う。もちろんこの手の中にも鑑賞に堪えうる作品とまがい物はあるが。観客に忍耐を強いて、我慢できたら芸術に理解があるかのような印象を与える作品には、厳しくしないと安易に真似する後進作家が現れがちだ。本作はオーディオブックと違いがない。この映画で抜粋を聞くよりは、オラフ・ステープルドンの同名原作を買いやすくしてもらいたい。映画というより、爆音上映で音楽を聴きながらVJ映像として楽しむならいいかも。

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