マタインディオス、聖なる村の映画専門家レビュー一覧

マタインディオス、聖なる村

ペルー先住民の慣習とカトリック信仰が入り混じる価値観を背景に、ドキュメンタリー性を内包して綴る寓話的物語。山岳部の集落で長年の喪を終わらせるため、4人の村人が守護聖人を称える祭礼を計画する。だが予期せぬ出来事により、自身の信仰に疑問を抱く。監督・脚本は、本作が初長編作品となるオスカル・サンチェス・サルダニャとロベルト・フルカ・モッタ。司祭役の俳優以外は、撮影が行われたリマ県山岳部のワンガスカルに暮らす村人たちが出演している。DAFOシネ・レヒオナル映画コンクール入賞。第22回リマ映画祭2018年ベストペルー映画選出。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    守護聖人を称える祭礼の準備過程を中心に、ペルーのある山岳地帯に住む人々の生活が、実際の村人を被写体として非常にゆったりとしたテンポで捉えられる。時に眠気を誘いもする独特のリズムを強調した撮影は心地よく、また同時に地域アートの文脈を超えた強度を備えてもいる。反復的に現れる鍵穴から奥を覗き込む形のショットも忘れ難い印象を残すが、とりわけ美しい風景とともに時間の経過を観客に強く意識させる、野外での長回しロングショット場面の数々がいずれも素晴らしい。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    アンデス山間部のとある集落で生きる人々を登場人物にして、彼らの生活と風習や風土を端正な画面で捉える。フィクションともドキュメンタリーともつかないゆるやかな物語は、フィクションにしてはストーリーの輪郭が曖昧で、ドキュメンタリーにしてはあまりに説明が乏しい。その欠如は観客をこの未知の集落に置いてけぼりにさせるような、ただならぬ感覚に陥れるのに成功している。ただし、もっと見る者を挑発的に不安にさせるには上映時間77分は短すぎたかもしれない。

  • 文筆業

    八幡橙

    鍵穴を介して内から外を見つめる目線で始まり、そして終わる。序章で穴の向こうに見えるのは、鍵を開けるのに四苦八苦する村人たちの姿。一方終章では奔放に動き回る子供たちを、鍵穴越しの目線のままカメラが自由に追いかける。この対比がテーマ全体を如実に象徴しているのだが、描かれる村の慣習や守護聖人=サンティアゴ(大ヤコブ)を崇める信仰、スペインによる侵略の爪痕などへの知識が足らず、正直難解な印象に。色のない寂寞とした風景や村人の後ろ姿、歌声は深く響いた。

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