L.A.コールドケースの映画専門家レビュー一覧

L.A.コールドケース

ハリウッドの名優ジョニー・デップと、「ラストキング・オブ・スコットランド」(06年)でアカデミー賞を受賞したフォレスト・ウィテカーが共演するクライム・サスペンス。90年代にアメリカの音楽界を震撼させた「悪名高い(ノトーリアス)」未解決事件を実話に基づき映画化。実在した主人公の元刑事ラッセル・プールをジョニー・デップ、彼とともに事件を追う記者のジャックをフォレスト・ウィテカーが演じた。作家のランドール・サリヴァンが膨大なリサーチと綿密な取材に基づき、2002年に出版した傑作ノンフィクションを原作に、「リンカーン弁護士」 (11)「ランナーランナー」 (13)のブラッド・ファーマンが監督した。伝説的な二人のラッパーはなぜ殺害されたのか、対立する所属レーベル同士の報復合戦が招いた悲劇なのか、 “天使の街”ロサンゼルスに巣食う「悪の正体」に迫る。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    事実関係を忠実に辿る一方で、アフリカ系のフォレスト・ウィテカーに記者役の架空の人物を演じさせた判断は、90年代LAの人種間対立と事件の捜査を必要以上に関連づけようとするような見方をあらかじめ退け、事件そのもの以上に真相を追うプールの姿に観客の注意を向けさせるという点で奏功している。陰謀論が跋扈するポスト真実の時代である今だからこそ、近年自身も真実をめぐる対立に苦しめられてきたジョニー・デップが愚直に真実を追求する姿は、より貴重なものとして映る。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    多くの側面から成り立っている映画に見える。当然ラッパー二人が銃殺された未解決事件の真犯人は誰かという真相を追う映画ではある。それと同時に、ロサンゼルス市警の汚職を告発する側面も強く、また二人のラッパーの対立を煽ったメディアの罪についての要素もある。そして20年間もの間事件を追い続けた元刑事とその家族についての映画でもある。それら様々な要素を盛り込み多角的に事件を捉えようとする志はとても高いが、その分散漫になってしまっている箇所もあるように見える。

  • 文筆業

    八幡橙

    90年代実際に起こったHIPHOP界若きカリスマ二人の射殺事件。今も未解決である理由と秘められた真相に、王道かつ手堅い演出で切り込むサスペンス。RAPを交えテンポよく進んでゆくが、複雑な事件の概要を台詞で処理する部分も多く、すんなりとは咀嚼し難い。とはいえ、匍匐前進の如くじりじりと真相ににじり寄るほどに次なる謎が生じる「藪の中」状態は非常にスリリング。巨大な権力の下で闇に葬られる真実。よその国の昔の話ではない、皮肉にも時宜を得た主題に戦慄。

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