未来は裏切りの彼方にの映画専門家レビュー一覧

未来は裏切りの彼方に

第二次世界大戦中にスロバキアの軍人や民衆が起こした反ナチス・ドイツ運動、スロバキア民衆蜂起を背景にした戦争ドラマ。娼館に寄った部隊から脱走したジャックは、流産した妻と共に軍需工場で働くが、娼館にいた美女が工場経営者と結婚することになり……。スロバキア人監督ペテル・マガートが、デブリス・カンパニーの舞台劇『EPIC』を基に、傲慢な男が独裁的に経営する軍需工場で繰り広げられる生存を懸けた愛憎劇を描く。出演は、スウェーデン出身のアリシア・アグネソン、「リジェネレーション」のラクラン・ニーボア、「ジョジョ・ラビット」のブライアン・キャスプほか。
  • 映画評論家

    上島春彦

    東欧の戦場が舞台。冒頭では時代も場所も分からないのが効く。しかし総括すると、いかにも才気煥発な若者が頭でこしらえたみたいな印象が強い。キャラを作りこんで、それを動かすという感覚だが、人物造形が操り人形みたいになっている。カタストロフもカタルシスもあり、褒めやすい。褒める人もいるだろうが予想を超える瞬間がなく、予定調和的な説話構成なので感動は薄い。ただ最後に生き残る人が意外である。多国籍キャストのため英語劇にしたのも悪いほうに働いた。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    恋愛譚が主軸になったメロドラマを想像していたが、あくまでもそれはひとつのエピソードにすぎず、複雑に絡み合う政治状況と人間模様によって映画はテンポよく進んでゆく。したがって、説明台詞があまりない故に物語はときに難解さを帯びるものの、かと思えば説明的な回想が不意に差し込まれる辺りにはやや作劇にブレを感じる。これだけのドラマが90分台の尺に詰め込まれているのが信じがたく、近年の映画における長尺化の風潮の中にあって、この重厚感と満足感には有り難みを覚える。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    どうして戦中のスロバキアを舞台にした低予算映画の登場人物がそれぞれにてんでんバラバラな訛りの英語を話すのかがわからない。そしてその英語を用いた芝居があまりにも酷い。そうした配慮のバランスの悪さは作品全体に広がっている。どれだけ説明的なショットを積み重ねようが構わない。だが、物語の背骨である主人公とヒロインたちの関係性すらまともに演出できていないのはさすがにまずい。これではアングロサクソンによる悲劇の歴史検証風偽善経済活動の誹りを免れないのでは。

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