七十七天 Seventy-Seven Daysの映画専門家レビュー一覧

七十七天 Seventy-Seven Days

冒険作家の楊柳松がチベット高原北方にある無人の地・羌塘(チャンタン)高原を単独踏破した実話を基にした冒険ドラマ。羌塘高原1,400km横断の旅に挑んだ青年は、事故で下半身麻痺となった女性カメラマン・藍天の助けを得ながら、無人の荒野を進んでいく。3年に渡り自然遺産のココシリ、アルティン山脈、クンルン山脈、チベット北方、ツァイダム盆地といった平均高度5,000メートルを超える無人地帯で撮影。監督・主演を務めたジャオ・ハンタンは、2017年China Britain Film Festival(中英電影節)にて新人監督賞を受賞。「迫り来る嵐」のジャン・イーイェンがカメラマンの藍天(ラン・ティエン)を演じる。
  • 映画評論家

    上島春彦

    中国の高山地帯の風景を見るだけで必見、とりわけ融雪洪水の場面が圧巻。ドキュメンタリー映画に時々登場する真っ平な塩湖の絶景にも見惚れるしかない。だが(実話だから文句を言うと怒られそうだが)車いす女性のエピソードが無駄。これを省いて80分にしていたら傑作なのに。ベア・グリルズだってエド・スタッフォードだって一人で何でもやってるではないか。CG合成の竜巻も不要。ピュアリティが却って失われる気がする。動物と青年の関わりだけで絶対面白くなったはず。惜しい。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    マイ・フェイバリットであるウォン・カーウァイ「花様年華」、是枝裕和「空気人形」、トラン・アン・ユン「ノルウェイの森」を結ぶ共通点が、すべて撮影をリー・ピンビンが担当していることに気がついたことがあった。本作の撮影監督がそんな彼にあって、さすがに広大な自然を捉えた厳かなロングショットなどに目を見張る瞬間があるとはいえ、人間がそこには映っていない。実際かなりの労力と危険を冒して撮影されたにもかかわらず、それが画面から伝わってくることはない。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    中国のトヨエツが中山美穂っぽいヒロインと感傷的な言葉を引き連れチベットの大地をゆく。と、道具立ては某巨匠の作品を想起させるのだが、残念ながら恋愛ドラマも野生動物たちとのサスペンスもうまくいってはいない。だが想像をはるかに上回るチベットの景色を引き画で見せられると、そんな物語構成上の些事などどうでもよくなってくる。自分が生きているうちに決してたどり着くことがないであろう世界のどこかにはこんな景色が広がっているのだと夢想させるだけでも映画は十分だ。

1 - 3件表示/全3件